人気オンラインサロンは「信者の集合体」なのか 顧客を"信者"に変える時代のブランド戦略

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カルトブランディングの定義を確認しておきたい。日本で出版された数少ないカルトブランディング関連本『カルトになれ!顧客を信者にする7つのルール』(マシュー・W・ラガス、ボリバー・J・ブエノ著、フォレスト出版)では、カルトブランディングを「企業、人間、場所、組織を、実際に『好きなブランドのためなら身を捧げる信者』の集合体に変えるプロセスを指す」と定義している。

同書によると、ここで言う「信者」とは、「ブランドとの一体感を持ちつつ、目に見えるさまざまな方法でブランドとの関わりを示す顧客」を意味するのだという。

つまり自発的に「伝道師」としての役割を担うということだ。信者になりえる存在として、人間だけでなく企業、場所、組織も含まれるのが興味深い。われわれが「ブランディング」という単語を聞いたとき、BtoC企業を思い浮かべがちだが、この定義を見るとBtoB企業であってもカルトブランディングは可能なようだ。

「信者の集合体」とあるように、単体の人間や企業が信者となっただけでは、カルトブランドとは呼べない。信者が「集合体」として大きな存在となって初めて、カルトブランドが成立する。

例えば一般企業がブランディングに取り組む場合、当然、利益に結びつけねばならない。ごく少数の信者を獲得しただけでは、ビジネス的に成り立たない。ある程度のサイズ感が必要なのは当然のことだ。また、「目に見えるさまざまな方法でブランドとの関わりを示す」とは、オンライン・オフライン問わず、さまざまな場所でブランドとの関わりを示すということである。

オンラインサロンはカルトブランドなのか?

カルトブランディングの研究者の中には、カルトを「当たり前の存在」「普通の存在」などと指摘する者もいる。犯罪に手を染めるカルト集団も存在する以上、なかなか理解しがたい考え方だ。しかし、北米のカルト研究者らは、先述のとおり「カルト」と「破壊的カルト」を明確に区別する。

スティーヴン・ハッサン著『マインド・コントロールの恐怖』(恒友出版)は、破壊的カルトについて、非倫理的なマインドコントロールのテクニックを悪用して、そのメンバーの諸権利を侵し傷つけるグループと定義している。「諸権利を侵し傷つける」とは、搾取にほかならない。つまり、マインドコントロールのテクニックを悪用して信者から搾取する団体は、すべて破壊的カルトといえよう。

また、同書は破壊的カルトのタイプを紹介しており、主に「宗教カルト」「政治カルト」「心理療法・教育カルト(自己開発セミナーなど)」「商業カルト(ねずみ講式の販売組織など)」の4つに分類できるとしている。われわれが日ごろ事件報道で目にするカルト集団は、確かにいずれかに該当する。

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