人気オンラインサロンは「信者の集合体」なのか 顧客を"信者"に変える時代のブランド戦略

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カルトブランディングにおいては、もちろん破壊的カルトを批判的に見る。カルトブランディングは、搾取、洗脳、マインドコントロールといった単語とは、対極に位置するものだ。

少しでも搾取や洗脳といった要素がブランドに含まれたとき(時々目にするのがやりきれないが)、それはカルトブランドとは呼べない。それは単なる破壊的カルトだ。カルトブランドと信者はあくまで対等な関係性にあり、お互いに高い倫理観が求められる。

よく、「オンラインサロンはカルトブランドなのか」という質問を受ける。これに対する筆者の答えは「カルトブランドに該当しないケースが多い」である。

ブランドやビジネスの世界においては、金銭や労働力が搾取の対象となる。価値基準は人それぞれなので、搾取の厳密な線引きは難しい。

しかしながら、オンラインサロンは内容や金額によっては、搾取の可能性がある。また、カルトブランドは業界やカテゴリーを支配していることが求められるため、一般的なオンラインサロンの規模では、そもそもこれに該当しない可能性が高い。

なお、固有名詞は避けるが、消費者や顧客からどんどんお金を吸い上げるオンラインサロンも中には存在する。これは搾取にほかならず、破壊的カルトの可能性すら出てくる。オンラインサロンは基本的にクローズドな空間である。外との境界線を引き、情報をコントロールする。これはマインドコントロールが成立しやすい環境といえる。

マスマーケティングの限界

なぜ今カルトブランディングが必要なのか、考察していきたい。日本、いや世界においても、いまだに「マーケティング・ブランディング=広告出稿」と思われている節がある。しかし、この考えはもはや古い。

過剰に広告費をかける古いマーケティング手法は、「広告費を投下し、その後刈り取る」という刈り取り型マーケティングの最たるものだ。こうした手法に依存することは、ブランドを死のスパイラルに陥れる。

広告もある意味ではブランドが発信するコンテンツの1つだ。しかし、消費者は広告から「マーケティング臭」のようなものを敏感にかぎ取るようになってきた。ブランドの「下心」は、消費者の購買意欲を瞬時に減退させる。この意味で、マスマーケティングはもはや限界なのかもしれない。

ただし、マスマーケティングはうまく活用すればブランディングに大いに貢献する。ブランドの世界観を限られた時間の中で大勢の消費者に浸透させる意味では、これに勝るものはない。ある程度の予算が確保できる場合、マーケティングやブランディングの戦略を立てて、その中でマスマーケティングの役割を明確にして活用する分には、推奨したい。

思考停止的に広告費を投下することを避け、広告コンテンツを消費者にとってのノイズとしない(下心を見せない)よう心がけるべきだ。

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