モスバーガーが「高級食パンブーム」に乗る事情 完全予約式で「毎月第2・第4金曜」のみ販売する

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2019年から始まった中期計画では「国内のモスバーガー事業の収益性改善を最優先としながら、海外事業や新規事業の成長に向けた投資も高水準」(同社中期経営計画より)で行うとしている。まずは食パン、そしてお菓子と、一見バラバラなようだが、家庭で過ごす時間に寄り添うアイテムを選んでいるという意味では共通性がある。

モスフードサービス営業本部付グループリーダーの吉野広昭氏。加盟店の指導など、モスバーガーチェーンを展開するうえでの幅広い業務を担当しているという(筆者撮影)

食パンの物販の検討が始まったときには、「社内でも驚きを持って受け止められた」(吉野氏)そうで、消費者としても「なぜ食パンなのか?」と疑問を感じたが、順を追って考えるとうなずくことができる。

なお、株式情報を見るとわかるように、モスフードサービスは厳密には「卸売業」に分類される。本部は、パートナーであるフランチャイズ店舗に商品を卸売りしているという立場のようだ。1000店を超える店舗に加えて他の小売業とも連携しながら、次々に物品を販売することは十分に考えられる。

強みは「日本生まれ」のアイデンティティー

課題となるのが、オーダーシステムを含めた各店舗のオペレーション。食パンの販売をさらに本格的に進めるなら、便利性を考えてネット注文にも対応してほしいところだ。

また大事なのが、それらの物販で「モスらしさ」をいかに上手に伝えていくかだろう。ハンバーガーチェーンとしての同社の強みは、国産野菜などに代表される、安心・安全や食材の新鮮さ、日本生まれのチェーンとしてのアイデンティティーである。

春の期間限定バーガー、「クリームチーズベジ〜北海道コーンのソース〜」(税込440円)。新鮮な国産野菜を強みとするモスらしい一品だ(写真:モスフードサービス)

例えば4月1日から発売の期間限定商品「クリームチーズベジ〜北海道産コーンのソース〜」(税込440円)は、春らしくレタスをたっぷり使い、クリームチーズと北海道産コーンのソースを合わせた、いかにもモスらしさが伝わってくる商品だ。また同時期に展開する「ご当地まぜるシェイク」は愛知のブランドいちご「ベニほっぺ」や、新潟産の洋なし「ル レクチエ」を用いたもの。地域の果物をうまく使っており、全国にあるFC店を活用した地域密着の事業を展開する同社の人となりにふさわしい。

物販事業など、新規事業を開拓する取り組みは未だ模索段階にあると推測できるが、さまざまな挑戦の中で改めて、同社としての原点を的確に捉え直すことが肝要になってくるだろう。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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