自動運転バスが“絵にかいた餅"で終わる理由 永平寺町の実用化現場で感じた普及の難しさ

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自家用有償旅客運送は全国各地で実用化されている手法だが、国は2020年2月に地域公共交通の活性化とそのための法改正を行っており、近助タクシーのような新たな事業の実現に向けて国土交通省が後押しする体制が整ってきている。

日本郵便と連携した「近助タクシー」による、ゆうパックの貨客混載実証の様子(筆者撮影)

全国各地から永平寺町への視察では、自動運転と近助タクシーの現場に案内し、それぞれの長所と短所を実感してもらう。その中でよく出る話題は、コミュニティバスから自動運転車両への転換だ。

コミュニティバスは、路線バスより車両がこぶりで、集落の中の比較的細い道まで路線がある地方自治体が運用し、地元のバス会社やタクシー会社に運行管理を委託する公共交通機関として全国各地に広まっている。

自動運転車を赤字でも続ける理由

コミュニティバス発祥の地とされる東京都武蔵野市役所にもうかがい、同地における公共交通会議の活発な議論について市職員から話を聞いたが、年間で1億円を超える収入があっても収支は若干の赤字であるという。

一方、永平寺町のコミュニティバスは年間4000万円強の財源を要して、年間収入は数十万円程度である。それでも、コミュニティバスは住民サービスであり、また住民に対するセーフティネットという観点から、赤字体質でも事業を継続することに住民が反対するケースは少ない。永平寺町を含めて、全国各地のコミュニティバス事業を実際に取材すると、そうした声が多い。

一方でバスやタクシーのドライバーの高齢化と、ドライバーのなり手不足という課題も全国共通にある。そこで、「コミュニティバスから自動運転車への転換」という発想が生まれるのだが、多くの場合は“絵にかいた餅”で終わる。

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なぜかといえば、自治体の財政状況によらず「どこで」「誰が」「いつ」「どのように利用し」「コスト管理をどうするのか」という出口戦略の詰めが甘いからだ。

実際、自動運転と自家用有償旅客運送の2つをやっと実現した永平寺町の事例についても、筆者の立場として言えば、自動運転事業の継続はサービス事業として数多くの課題があり、解決に向けた議論は今度さらに難しさを増すと感じている。

それでも、「小さな歩みを続けていこう」と地元の皆さんと交流を深める中で、自らの気持ちを整理している。地域交通をよりよい形にするのは、並大抵のことではない。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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