世界2大鉄道メーカー、小さくない「合併」の代償 市場寡占避けるため手放さざるをえない製品も

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欧州委員会は域内における市場の寡占を避けるため、今回の合併にもいくつかの注文を付けている。

ベルリンに鉄道事業本部があった旧ボンバルディア(筆者撮影)

対等合併だったシーメンスのときとは異なり、今回はアルストムがボンバルディアを買収する吸収合併だったこと、またシーメンスと違い、ボンバルディアは高速列車の技術プラットフォームは保有しているものの、製品としてラインナップはしていないため、高速列車分野における市場寡占化はないと判断されたことは大きかった。

とはいえ、競合する鉄道メーカー同士であれば、同種の製品を保有しているのは自然なことである。当然、それらのうちいくつかの技術は手放さなければならなかった。

高速列車技術はどうなる?

では、合併後に手を離れることになったのは何か。

アルストムが基幹製品である高速列車TGVを手放すはずはない。代わりにボンバルディアの高速列車プラットフォーム「ゼフィーロ」の知的財産などは手放さなければならなくなった。

「ゼフィーロ」プラットフォームは、日立製作所のイタリア法人である日立レールS.p.Aによって製造される高速列車「ETR400型」で採用されている。現在はイタリア鉄道がフランスおよびスペイン国内での営業へ向けて追加編成を注文するなど、今も非常に関係が深いことから、日立製作所が譲渡先の筆頭候補になることは間違いないが、現時点では日立側からも特にアナウンスはされていない。

一方で、「ゼフィーロ」プラットフォームは譲渡されることなく廃止という話もある。もし日立がその技術を入手した場合、高速列車市場ではアルストムのライバルとなることから、その可能性も完全には否定できない。そうなると日立は独自の技術でETR400型の後継車種を構築する必要が出てくる。

欧州機関車市場でシーメンスとシェアを分け合うボンバルディアのTRAXXシリーズは、アルストムブランドで販売を継続する(筆者撮影)

欧州ではシーメンスと並んで多数の納入実績がある、ボンバルディアの汎用型機関車TRAXXシリーズも残され、今後は「アルストムTRAXXシリーズ」として販売されることになる。一方で、アルストムにも同様の機関車シリーズ「プリマ」がある。欧州ではまったく鳴かず飛ばずであったが、アゼルバイジャンやインド、モロッコなど、他の地域ではそれなりに販売実績があるため、その処遇は気になるところだ。

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