ホンダ「CRF250L」全面改良、あえて変えない訳 日常のオンロードも休日のオフロードも楽しく

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パワーユニットは、水冷4ストロークDOHC249cc単気筒エンジン。給排気系を中心にチューニングを施し、オンロード・オフロード求められる出力/トルク特性を追求(筆者撮影)

搭載されるエンジンは、2011年のCBR250Rに搭載されて以来、正常進化し続ける水冷単気筒250ccで、今回のモデルチェンジでも進化したようだ。右手に忠実にレスポンスする回転と、ハンドルに伝わる適度な微振動が4ストロークエンジン特有の鼓動感で期待が高まる。

未舗装路でCRF250Lを試乗する筆者(筆者撮影)

期待どおり、1速クラッチミート直後からの走り出しは右手に忠実だ。今回は悪路中心の走行だが、2速〜3速と低速3000〜4000回転も回せば、車両重量140kgと軽量な車体は十分に加速していく。CRF250は、前後のサスペンションストロークを260mm確保している。これはレーシングモトクロッサーの300mmに迫るストローク量で、一般公道・市街地の走行を前提にしたマシンとして最大量の部類だ。

低回転域から高回転域まで安定したフィーリング

味付けは秀逸で、極低速から速度を増幅させていった場合でも、そのストローク量と作動速度には不満のないもので、このセグメントとしては明らかに他車との違いを見せつけている。また、今回大幅に見直された車体は、横方向ねじれ剛性を25%ダウンしたことで、マシンの切り返しが軽くなったうえに、定常円旋回を描くようなコーナーリング時にも、安定したコーナーリングフォースが発生し、自然とフロントまわりから向きを変えてくれる。コーナー出口でのアクセラレーションにエンジンは忠実に反応してくれる。

林道を走行する筆者(筆者撮影)

このタイミングの純正タイヤのグリップフィーリングは、260mmのリヤサスペンションストロークと見事なマッチングを見せる。スイングアームピポットと前後スプロケットの適切な位置関係が出ており、適度なアンチスコート力によって、リヤタイヤが路面にしっかりと食いついてくれることがわかる。このあたりのセットは、ピンポイントのプロライダーユースではなく、多くのエントリーライダーからベテランまでが週末に楽しめるセットとしているところも好感度が持てる。

市街地での走行も、たっぷりあるサスペンションストロークのおかげで、まるで雲の上を走るような乗心地のよさ。時速50km/hの際には、6速3000rpm。高速道路巡航の時速100km/hでは、6速6000rpmと、250ccならではの高回転ではあるが、ホンダ単気筒エンジンは小気味よく回ってくれるので違和感はないだろう。日常の便利さと休日の楽しさに磨きを掛けた久しぶりの本格的なデュアルパーパスモデルの誕生だ。

取材車はCRF250L〈s〉。価格は、CRF250L/CRF250L〈s〉ともに59万9500円(税込)。

 

著者によるCFR250L<s>の試乗風景動画
宮城 光 モータージャーナリスト

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みやぎ ひかる / Hikaru Miyagi

1962年生まれ。1982年鈴鹿サンデーオートバイレースに於いてデビュー3位。直後にモリワキレーシングと契約、1983年鈴鹿4耐で優勝、同年全日本F3クラスとGP250クラスに於いてチャンピオン獲得。1984年全日本F3クラス、F1クラスチャンピオン獲得。1988年HondaのHRCと国内最高峰GP500ccライダーとして契約。1993年より活動の場をアメリカに移し、全米選手権でチャンピオンになるなど、日本だけでなく海外でも活躍。1998年からは国内4輪レースでもその才能を発揮し、翌年の「4輪スーパー耐久シリーズ」ではチャンピオンを獲得する。また、世界耐久選手権シリーズ・鈴鹿8時間耐久ロードレースでは2003年より5年間ホンダドリームレーシングの監督を務めた経験ももつ。2016年には米国ボンネヴィルにおいて4輪車の世界最高速度記録を達成、世界記録保持者。開発車両ではTeam無限のマン島TT参戦車両・2輪電動マシン「神電」の初期からの開発ライダーを担当し2018年時点で5連勝中、2019年もチャレンジする。一方では、警視庁及び企業向け交通安全講話やライディング&ドライビング講師、専門学校講師などのほかに、 日本テレビのMotoGP解説者や雑誌などのメディアでレースやバイクの解説を務めるなど、多方面で活躍中。ホンダ・コレクションホールではホンダ歴代の2輪4輪グランプリマシンの維持管理テストレーサーを務める。無類のラジコン好き。

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