橋下徹「教育格差は自己責任で片付けられない」 日本の「教育への公費投入」は先進国最低レベル

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このような意味で、僕はすべての子どもたちに、家庭の経済状況にかかわらず自分の能力を最大限に伸ばすことのできる環境が与えられなければならないと考えるし、子どもたちが家庭の経済状況によって進学を諦めることがあってはならないと強く思う。

ところが日本の場合、教育に関して家庭の自己責任論が幅を利かせている。

OECD(経済協力開発機構)発表の『Education at a Glance(図表でみる教育)』(2020年版)によれば、初等教育から高等教育に対する公的支出総額の対GDP(国内総生産)比率はOECD平均で10.8%。だが日本は7.8%と、先進国のなかでは最低レベルにある。

つまり、各家庭が公的な教育支出の少なさを、家計費でカバーしているわけで、親の所得によって教育費は大きく異なってくるということだ。

そして、朝日新聞とベネッセ教育総合研究所が2018年に行った「学校教育に対する保護者の意識調査」では、教育格差について「当然だ」「やむをえない」と答えた人が62%、「問題だ」は34%。2008年は「問題だ」が53%だったことを見ると、教育格差を大勢の人が容認するようになっているように思える。

親の所得によって教育費に大きな差が出ると、子どもたちのあいだで、教育を受ける環境に不平等が生じる。親の所得が低い子どもは、自分の行きたい進路を選べなくなってしまう。

そしてこのような不平等を社会が容認、というよりも諦めてしまうというのは、極めて危機的な状態ではないだろうか。

府知事時代にやったこと

そこで僕は大阪府知事時代に、低・中所得世帯の私立高校や専修学校の授業料を無償化することに乗り出した。そして松井一郎前府知事、吉村洋文現府知事もそれを承継してくれている。大阪市長時代には塾に通う費用の補助制度も作った。

お金がないから、公立高校にしか行けないというのは不公平だろう。

お金があろうがなかろうが行きたいところに行ける、公立でも私立でも自由に選べるようにする。そうなると、当然人気のない高校は入学希望者が減る。

だからこれも僕が大阪府知事のとき、3年間定員割れが続いた公立高校は統廃合の対象となるというルールも作った。これまで黙っていても生徒が集まっていた公立高校や、定員割れをしても存続していた公立高校が、自分たちで努力して生徒を集めなければならなくなった。学校関係者のなかには猛反対する者もいたが、改革を断行した。

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