「終電後」のJR、線路の上で何をやっているのか 安全運行に不可欠な深夜のレール交換に密着

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ミーティングが終わると、班ごとに「KY」と呼ばれる危険予知活動、列車接近時に待避する際の手順や動作の確認を行い、車に分乗して現場へと向かう。現場に着いたのは日が変わった午前0時20分ごろ。まだ最終列車は通過しておらず、線路内に入ることができないため、機材を下ろした作業員は敷地外でしばし待機する。

0時30分。今回作業する線路を、貨物列車が通常より数分遅れて通過した。この区間は、上り線と下り線がそれぞれ2線ずつある複々線で、外側の2線は貨物列車と特急や新快速が、内側の2線は普通や快速が走っている。

深夜も貨物列車が走る

今回交換するのは、いちばん東側にある「下り外側線」の内側に敷かれたレールだが、貨物列車は深夜も運行されるため、そのままでは交換が行えない。そこで、最終の旅客列車が通過した後、外側線を列車が走らないようにする「線路閉鎖」という手続きを行う。線路閉鎖が実施されている間、外側線を走る列車は内側線を通る。

先ほど通過した貨物列車が、外側線を走る最後の列車となる。作業員がタブレット端末で、列車が支障のない区間へ入ったのを確認し、運行指令所に線路閉鎖を要請。完了の合図を受けると、一斉に作業員が線路内へと入った。いよいよ作業開始である。

設置前の新レール(中央)。右は取り外された旧レール(筆者撮影)

今回交換する新しいレールは、前日までの夜間作業で線路脇に取り下ろしてある。このレールを現在敷かれている2本のレール間に仮置きし、次に古いレールを撤去して内側線寄りに移動。新レールを本設置し、端部を溶接するまでがこの日の作業だ。

資材を運び終えた作業員は、それぞれの作業内容に従って、さっそくレールの切断やマクラギと固定しているボルトの取り外しに取り掛かる。3人が1組となり、前の2人がそれぞれ外側と内側のボルトを電動工具でゆるめ、後ろの1人が抜き取って脇に置いてゆく。別のグループは、レールを水平移動させる「山越器(やまこしき)」を設置。どの動きにもまったく無駄がなく、流れるように作業が進む。

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