五輪、海外客断念でも鉄道に残した「レガシー」 多言語対応やバリアフリー化は無駄にならない
世界から人を迎えるにあたって、課題となるのは「バリアフリー」である。日本の場合はバリアフリーを充実させるようになったのは近年になってのことであり、首都圏では最近になって急ピッチで工事が行われるようになったが、その理由の1つには五輪・パラリンピックの開催があったと考えられる。とくにパラリンピックは障がい者のスポーツ大会ということもあり、観客対応の点を考えると、バリアフリーは必須である。
地下鉄という条件から段差や階段がどうしても多い東京メトロが推進したのは、車いす利用者が単独で移動できるためのエレベーター整備だ。どの駅でもエレベーターで地上に出られるルートを1つは確保するよう急ピッチで整備を進め、2013年度には全179駅中140駅だった「エレベーター1ルート」の駅は、2020年夏時点で全180駅中177駅、全駅の98%で整備を完了した。残る駅も段差解消ルートが整備されている。
東京メトロの優れているところは設備面だけではなくソフト面にも力を入れたところである。全駅社員に「サービス介助士」の資格を推進し、2018年3月末には対象社員はおおむね資格を取得している。
会場最寄り駅では大規模改良も
JR東日本は、競技会場に近い中央・総武緩行線の千駄ケ谷駅・信濃町駅、山手線の原宿駅で大がかりな工事を実施した。
新国立競技場の最寄り駅となる千駄ケ谷駅では、これまで使用されていなかった臨時ホームを新宿方面へのホームとし、島式ホームを秋葉原方面への専用ホームとした。エレベーターの新設・大型化なども行った。信濃町駅も複数台の大型エレベーターを設け、トイレを使いやすくした。原宿駅は、臨時ホームを外回り専用ホームにし、駅舎を新設、駅構内を拡張し混雑を緩和したうえでエレベーターを増設した。
利用客の多い有楽町駅では国際フォーラム口と中央口を結ぶ通路を新設し、新橋駅ではコンコースを拡張、ベイエリアの競技会場に近い新木場駅は導線を改善した。東京モノレールとの乗換駅である浜松町駅ではエレベーターの大型化やモノレールとの乗り換え通路の相互通行化を行った。
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