五輪、海外客断念でも鉄道に残した「レガシー」 多言語対応やバリアフリー化は無駄にならない

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このほかにも、都内では2020年夏までに渋谷駅の埼京線ホーム移設、新宿駅の東西自由通路開通など大がかりな工事が行われたが、これらはもともと、2020年夏の開催予定だった五輪・パラリンピック前の供用開始を目指して進められていた。

新宿駅の東西自由通路は2020年7月に開通した(撮影:梅谷秀司)

通常の通勤・通学客などに加えて国内外からの観戦客らが利用することで、一時は大幅な混雑も懸念されていた五輪・パラリンピック開催時の東京の鉄道輸送。オフィシャルパートナーとなっているJR東日本や東京メトロに限らず、首都圏の鉄道各社は観客輸送による利用増は確実だったといえる。五輪期間中は、通常の終電終了後の延長運行も計画されていた。

だが、海外からの観客受け入れ断念が正式に決まったことで世界各国からの訪日客利用は見込めなくなり、国内からの観客利用もどうなるかは不透明だ。

無駄ではなく「レガシー」に

コロナ禍による訪日観光客需要の消滅、通勤利用の減少に加え、五輪・パラリンピックの海外観客輸送もなくなることになれば、鉄道各社にとっては厳しい状況だ。せっかくの備えも生かされないことになる。しかし、各種の取り組みは決して無駄ではない。

多言語対応の自動券売機も増えた(撮影:尾形文繁)

鉄道施設に限らず、インフラ整備は大規模イベントなどがないと改善が進みにくい傾向があるのは事実だ。五輪・パラリンピックという国際的大会は、その点でさまざまな動きに弾みをつける効果がある。社会資本整備としてもともとやらなければならなかったことが一気に進む。そして、それ自体が優れた「レガシー」として残り続ける。

2016年の大会スポンサー契約時、JR東日本の冨田哲郎社長(当時、現会長)は「この取組みが2020年以降も持続的な効果をもたらすレガシーとなるよう努めてまいります」とコメントしている。コロナ禍が収束し、再び世界の人たちが東京にやってくるようになった際には、これらの設備は十分に生かされることになるだろう。これは都市鉄道における「レガシー」である。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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