千葉県知事選で圧勝、熊谷俊人氏が語った原点 「信長より家康」に関心を持った子ども時代

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だが、ふと気づくと、28歳。30歳はもう目の前だった。「これでいいのか――」。2005年、郵政民営化関連法案が成立、自民党の小泉純一郎政権が「自民党をぶっ壊す」と言って、改革の旗を振っていたときだった。

(撮影:田所 千代美)

迷った揚げ句、政治家を目指す若者を養成する「一新塾」の門をたたく。1994年に大前研一氏が創設したこの塾は、ネクストリーダーの養成学校としても知られ、政治家はもちろん、社会企業家を志す人など、多種多様な人材が集う場所だ。平日夜間や土日で働きながら学ぶことができる。しかも、学ぶというよりは「とにかく、実践を重んじる場所で、政治家の基本を教わった」。民主党の公募に通り、2007年に市議選へ挑戦。関西出身で「地盤、看板、かばん」がない熊谷は、見事トップ当選。1期目から注目を浴びる存在になった。

そして2009年4月。市議になって2年が経過していたが、熊谷の人生を大きく変える出来事が起こる。2001年からほぼ2期市長を務め、引退を表明していた鶴岡啓一市長が、収賄容疑で逮捕されたのだ。地方自治体のトップは、元来旧自治省(現総務省)出身者が強い。千葉市も、その典型例だった。

鶴岡氏の前任である松井旭氏などは、自治省から千葉市役所の幹部に転じ、6期24年、市長を務めた。行政マンが、組織の内部から昇格して、トップに就くという構図は、安定はする。だが、どうしてもしがらみができやすい。「市役所の代表」が、「市民の代表」たる市長に就任することが当たり前になると、市民との距離はなかなか近くならない。千葉市は、平成バブル崩壊に伴う開発の失敗から抜け出せず、政令指定都市の中では、最悪の財政状況だった。「変えるというよりは、このままだともたない。変えるしかない」。しかも、もっと千葉市の潜在力を出せるはずだ」。

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