子供の探究心を育む「オンライン習い事」の底力 Web上に自習室を設ける教室も登場している

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プログラム作りの背景には、中川氏が大学院でピアノ教育を研究していたこと、ピアノ教室にある700冊近い教本を研究し「教本がきちんとできていないと、オンライン教室のクオリティーが担保できない」という結論にたどり着いたことがある。

教本に関しては、オンラインならダウンロードすればよさそうだが、あえて1冊ずつ製本し郵送している。

「小さい子、初めて習う子にとって、楽譜の線(五線)の幅や音符の玉の大きさは重要。1冊の本になっていると子どもも喜ぶし、やる気につながる」(中川氏)。

教本にはシールコレクションページもあり、1曲終わると、同梱して送ったシールを保護者に貼ってもらう仕様になっている。

入会は、体験レッスンののち、1カ月のお試し期間を経て、その後正式入会となる。最初の1カ月は簡単なキーボードやおもちゃのピアノでもOK。それで続けそうなら、楽器を用意するという流れだ。

レッスンはZoomで行うが、授業の記録動画はすべてマイページのアーカイブに残っていく。家での練習風景をアップし、次のレッスンまでに講師と共有することができるのも、オンラインならではだ。

リアルの教室がなくなることはない

「オンラインレッスンの難しいところは、合奏ができないことと、手を取ってあげられないこと。そのため、リアルほど進度は早くない。しかし、その子自身が理解するまで進めないので、定着率は高い」(中川氏)

自身や子どもが楽器を習ったことがある人なら経験があると思うが、リアル教室に通っているといつまで経っても「ド」の位置があやふやなのに、何となく弾けてしまうことが多々ある。しかし、オンラインの場合はわからないものはわからないので、確実に本人が理解するまで弾くことはできない。その分、講師の伝える力が問われるという。

一方で、中川氏は「グランドピアノが並ぶリアルの教室の雰囲気は特別なので、今後も(リアルの教室が)なくなることはない。そもそもターゲットが違う」とも語る。

実際、オンラインピアノ教室の生徒は、東京よりも海外在住の日本人や地方在住の生徒が大多数を占める。そのため、3、4カ月に一度、オンライン上でお楽しみ会を催し生徒同士の交流を図り、発表会もオンラインで開催する。 

今はまだ、日本に比べると海外のほうがオンラインレッスンに抵抗がない。同校では今年、台湾と中国で開校を予定しており、将来的はアメリカへの進出も視野に入れている。

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