シャープ「不正会計」で露呈したガバナンス不全 シャープ出身役員へ迎合と忖度、意識の甘さも

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報告書によると、事業執行部門のトップら経営幹部がこぞって売り上げ計上基準を無視・軽視し、内部統制を無効化していた。さらに、経理財務部門から不正会計への懸念の声があがっていたのに対応せず、その後は不正を黙認していた。

不正取引について取締役会への報告はなく、監査役(会)もこうした不正を発見することができなかった。会計監査人に対しても不正は隠蔽され、一連のガバナンス機能がまったく形骸化していた点は深刻だ。

報告書は再発防止策として、内部監査部門の人員強化をはじめとする監査体制の強化や会計基準順守意識の醸成を求めている。野村社長は「子会社への監督の強化を進める」と意気込むが、シャープ出身の経営幹部が「適切な会計処理が重要であることについて、十分に理解できていないことが判明した」と指摘されたことの衝撃は大きい。

業績は足踏み状態に

今回の不正会計を反映した結果、シャープは2019年3月期業績まで遡及して決算を訂正。売上高を累計で75億円、下方修正した。

業績不振に陥ったシャープは2016年に台湾の鴻海精密工業傘下に入り、経営改革を進めてきた。鴻海傘下に入った後、黒字は定着したが、改革中に幹部人材が相次いで流出。そのことがガバナンス体制の不備につながったとみられるうえ、業績も足踏み状態が続く。

今2021年3月期は第1四半期(2020年4~6月期)に車載向け液晶パネル事業などで新型コロナウイルスの影響が出て、営業利益が前年同期比37.8%減少でスタートしていた。しかし、その後はコロナ禍の巣ごもり需要もあり、空気清浄機や冷蔵庫など家電の需要が伸びたことで、業績は回復している。こうした状況を背景に、2021年3月期の配当は30円(前期18円)に増額する。

シャープは現在、液晶パネル事業やカメラモジュール事業を分社化して、他企業との資本協力を容易にすることで事業拡大を図っている。これら子会社の上場による資金調達も視野に入っている。

だが、今回発覚したように、子会社の管理体制に不備があっては、分社化を軸にする改革は健全に機能しないおそれがある。子会社の上場も容易ではない。

会計基準や法令の順守の意識が幹部層で徹底されなければ、事業拡大に向けたプレッシャーが大きくなる中で新たな不正が生じかねない。シャープは成長に向けて経営体制と社内意識の改革を徹底できるかが問われている。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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