岡山発「バター専門店」月商2000万に達したワケ ほとんどの商品が「数カ月待ち」なのはなぜか
バターとチョコレートを組み合わせ、両者の口溶け温度の差を利用して複雑な味を感じさせることを狙った。
ホワイトデー用の商品は白いバターチョコレートの中に酸味のあるフランボワーズバタークリームが満たされており、さらに内側に、さまざまな味の複合体「コア」が収められているという構成。コアに使われている素材はビスキュイやカリカリとした食感のクラッカンショコラ、フリーズドフランボワーズを練り込んだフランボワーズバターチョコレートなどだ。
香り、食感、そして味という3つのチャンネルで感じられる味わいが、それぞれ口溶けによる時間の経過とともに変化していくのだから非常に複雑だ。それらすべてを味わい分けるためには、解説のようなものが必要かもしれない。
それほど空腹ではないときに、気を落ち着けて集中しながら食べたいスイーツだ。
「ブール アロマティゼ」でとくに言えるのが、なめらかなバターが直接舌にあたり、さらに体温で溶けていくことで、含まれた味がより純粋に感じられるということ。小麦の食感がまず舌に感じられる、クッキーやケーキなどの焼き菓子と大きく違う点だ。
食後にちょっとだけ、あるいはお酒と合わせながらといった食べ方もよさそうだ。価格設定がハイグレードなこともあり、ギフト用途での注文も多いという。
機械による省力化の利点
こうした機械による省力化には2つの利点があるという。1つには、人員を最小限にすることで、負担を軽くする意図。
「人を増やすと、売れているうちはいいが、ピークアウトが来ると苦しくなります」(秀島氏)
また、機械には開発費がかかるが、一度つくったものはさまざまな用途で利用でき、ニーズの変化に柔軟に対応できる。例えば今の定番商品であるバターケーキが売れなくなっても、いくらでもほかの商品にスイッチができるということだ。
「バターを餅で包んだ和菓子も販売しています。これは、岡山でまんじゅうを商っていたときに使用していた機械でつくったものです」(秀島氏)
機械への投資は決してムダにならないことを示している。
以上説明してきたように、最小限のスタッフと機械化という体制によって、ニーズを先取りして発売し、一般に認知されたところで次のニーズへと切り換えていくフットワークの軽さが生まれる。1つの流行がだいたい2年ほどもつというのが同氏の持論だ。
当初パンを焼くことによって目指した「愛を分かち合う」というメッセージに比べると、クールなものづくり姿勢に思える。
しかし秀島氏はやはり自分のものづくりを通して、人々に自分の試みを評価されることが大きな励みになるという。
「パン職人だった時代に知り合ったシェフ、そしてSNSを通じて感想を寄せてくれたお客様などのつながりが自分を支えてくれていると思います」(秀島氏)
数奇な道筋をたどってきた秀島氏。しかし「ものづくり」そのものへ向ける思いは一途でもある。試行錯誤を重ねる日々は慌ただしいようにも思えるが、同社にとってのちょうどよいあり方なのかもしれない。
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