日本企業がGAFAよりリシュモンに学ぶべき理由 コロナ禍でも売れ続けるブランドの強さの秘密

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ところで、コロナ禍でも好業績な企業の代表としてまず思い浮かぶのがGoogle、Amazon、Facebook、AppleなどアメリカのIT企業だ。これら企業の戦略やビジネスモデルの本、記事は日本でも大人気だ。

しかし、ほとんどの日本企業にとって、これらGAFAのやり方を参考にすることは難しいと思われる。これらの企業は、大規模なマーケットを席巻することが前提のモデルで、いくら戦略やビジネスモデルが優れていても、日本企業が参考にして取り入れるのは困難な部分が多いからだ。

では、どうすればいいのか。答えはラグジュアリーにある。ここ数年目立って台頭してきたGAFAよりも昔から存在し、日本企業に似た体質の企業群がある。それが、時計や宝飾品など職人技術に根差した価値を創出しているラグジュアリーブランドだ。

これらのブランドが持っている経営資源は、地道なものづくりを続け、技術開発を続けてきた日本の中小企業と多くの共通点がある。明白な違いは、ブランディングとグローバル戦略だけだ。

カルティエやピアジェなど、今でこそセレブ御用達でグローバルに知られる時計、宝飾ブランドも、もともとスイスの山奥や、フランスの職人階級出身のファミリー発祥の小さな名もないものづくり屋だった。

彼らは、誕生からの歴史、発祥地の特性、創業者や職人など縁深い人物、ものづくりの技術など、日本のものづくり企業ならどこでも有している経営資源を地道に磨いてブランド価値に転換することで、現在の世界最高峰の地位を確立してきたのだ。

日本のものづくり企業に通じるリシュモン

ティファニーの買収(2021年に決着)で最近も話題になっていたルイ・ヴィトンを傘下に持つLVMHやエルメスなど、世界的なラグジュアリーブランドはいくつかある。

だがあえて私は、「リシュモンに学べ」と言いたい。日本ではあまり知られていない企業グループ「リシュモン」はカルティエやモンブランを傘下に持つラグジュアリーコングロマリットだ。

LVMHのような知名度や派手さはないが、リシュモングループやその傘下ブランドのやり方にこそ、ブランディングとグローバル化戦略がうまくない日本企業が現状を打破するヒントが多く隠されている。

多くの日本の企業が、「旧ビジネスモデルから脱却しなければ明日はない」とばかりにGAFAを仰ぎ見る雰囲気になっているが、今まで地道にものづくりや技術開発に心血を注いできた企業には現実味に欠ける。可及的速やかにできる価値作りに効く処方箋は、ものに高い付加価値をつけてアピールするのが得意なラグジュアリーブランドに隠されている。中でも技術経営色が強いブランドを多くマネジメントしているリシュモンが参考になる。

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