「30泊36万円」超高級ホテル暮らしは定着するか 都内の名門老舗ホテルが長期滞在プランで勝負

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同サービスのきっかけは2020年5月に定保英弥社長が社員に一斉送信した「緊急メール」だった。

「難局を乗り越えるため、皆さんのアイデアを募りたい」

社長の呼びかけに、社員から約5600件の提案が寄せられ、その中に長期滞在プランやサテライトオフィスのアイデアがあった。

ただし、帝国ホテル側はホテル事業以上に注目されることに困惑気味で、「料金はホテルとすれば安いかもしれないが、これはあくまでもアパートメント事業。(シャンプーや歯ブラシなどの)アメニティの交換はないし、シーツの交換も3日に1回。われわれが普段提供しているホテルのサービスと比べられても困る」と照井課長は強調する。

新しいライフスタイル「ホテリビング」

実際、価格設定の参考にしたのは、同業の長期滞在プランではなく、不動産業者の家具付きレジデンス=サービスアパートメントだった。帝国ホテルの新サービスは旅館業法上の「宿泊」ではあっても、ホテルで暮らす「ホテリビング(ホテル・リビング)」という新しい業態。新しいライフスタイルを世の中に投じる意味があるのだという。

ザ・キャピトルホテル東急はビジネスパースン向けにスイートルームの長期滞在プランを打ち出した(記者撮影)

「当然、料金設定を含め、アパートメント事業を始めることで、ブランドイメージ悪化の議論はあったが、38年前にホテルに隣接する複合ビルでオフィスビル賃貸事業を始めたときもたくさんの批判を受けた。いまはその不動産賃貸が経営を底支えしている。バイキング形式も帝国ホテルから全国に広がったが、サービスアパートメントも事業の柱として定着させたい」と照井氏は話す。

他の老舗ホテルも帝国ホテルに追随している。ホテルニューオータニは朝昼夕3食付きの「新・スーパーTOKYOCATION」を30泊75万円でリニューアル販売。京王プラザも30泊21万円で朝食付きの「”暮らす”@the HOTEL」を始めた。

ただ、都内のあるホテル関係者は「ホテルが不動産業の発想に近づいている。背に腹は代えられないが、GoToトラベルの影響に加えてアパートメント事業のような価格に引きずられ、コロナ後も単価が容易に戻ってこない可能性もある」と危機感を吐露する。

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