みずほ「大規模ATM障害」に残された2つの疑問 再発防止策の策定時に改めて説明が求められる

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この不安を払拭するために約20年をかけて開発、導入されたのが現在の勘定系システムだった。だが、今回の大規模障害で新システムの信頼にも傷がついた。3月1日の記者会見で、みずほの藤原弘治頭取は、「過去の教訓を活かしてシステムを構築したが、運用上の問題がまだ残っている」と釈明した。

大規模障害は収束したものの、大きく2つの疑問が残されている。1つ目はなぜここまで被害が拡大したかだ。一般的に、「問題の起きた部分はほかのシステムから切り離し、被害の拡大を防ぐ」(システム関係者)からだ。

今回のみずほの場合、最初に問題が発生した定期預金の更新処理をネットバンキングやATMから切り離すことが先決だ。これで定期預金の取引はできなくなるが、エラーが蓄積して勘定系システム側に影響が及ぶことはなく、ATMの大量停止という事態を防ぎうる。

早急に求められる再発防止策

みずほはこの点について「勘定系システムには(問題部分を)切り離す機能がついている」としているが、結果的に被害が拡大してしまった理由については「調査中」としたままだ。

4月1日付でみずほ銀行の頭取は交代するが、藤原頭取は会見で「3月までに起きた事象は頭取である私が責任をもって進める」と述べた(撮影:今井康一)

もう1つの疑問は「平日であれば障害はより広範にわたったのではないか」(システム関係者)というものだ。今回の障害は休日に起こったために、取引エラーもATMとネットバンキングに限られていた。「定期預金とネットバンキング以外ではエラーは出ていない」(みずほの広報担当者)としているが、銀行関係者からは「店頭の取引がある平日に同じことが起きていたら、ほかの業務システムに影響が及んだのではないか」という声は少なくない。

こうした不安を払拭するためには、より詳細な原因究明と再発防止策の公表が欠かせない。みずほは金融庁から報告徴求命令を受けており、その期限は3月末と言われている。

今回、大規模障害後に行われた会見では、「詳細な説明がなされず、完全には理解できなかった」(メガバンク幹部)とも言われた。みずほの頭取は4月1日付で交代するが、藤原頭取は会見で「この問題がきちんと総括された中で、引き継ぎを行いたい」と述べている。残された疑問を解消するためにも、藤原頭取体制の下で、再発防止策を含めた改めて丁寧な説明が必要だろう。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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