1万円札が生まれる街「王子」と渋沢栄一の因縁 飛鳥山に邸宅構え「紙の街」発展の礎を築く
NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公・渋沢栄一は武蔵国血洗島(ちあらいじま)で出生した。同地は現在の埼玉県深谷市にあたる。深谷市は大河ドラマ館をオープンし、今回の大河ドラマ放映を起爆剤に地域活性化に取り組んでいるが、同様に大河ドラマ館を開設して渋沢との深いつながりをPRするのが、東京都北区だ。
北区の中心地でもあり本庁舎の最寄りになっている王子駅は、JR京浜東北線・東京メトロ南北線・都電荒川線が乗り入れる。交通の利便性は高い王子だが、同じ区内の赤羽と比べると存在感は薄く、これまで陰に隠れがちだった。
しかし、王子駅のすぐそばにある飛鳥山は渋沢が邸宅を構え、同地には現在も渋沢史料館をはじめ青淵文庫・晩香廬・旧渋沢庭園といった渋沢と縁のある史跡が残っている。渋沢への注目が集まることで、飛鳥山も脚光を浴びることになる。北区にとって、千載一遇のチャンスでもある。
桜の名所・飛鳥山の最寄り駅
都内の桜の名所として知られる飛鳥山は、江戸時代に8代将軍・徳川吉宗が桜を植樹したことから郊外の行楽地として人気を博すようになった。明治新政府が発足すると、浅草公園・上野公園・芝公園・深川公園とともに日本初の公園に指定された。
浅草・上野・芝・深川の4公園は、寺社の境内を公園へと転用したこともあって敷居が高かった。対して、贅沢を禁じる享保の改革下にあっても飛鳥山での花見は酒宴や仮装、唄などが許されていた。庶民の娯楽地だったため、飛鳥山は格式高い境内地由来の公園よりも人気を集めた。
しかし、浅草・上野・芝・深川の4公園は都心にある一方、飛鳥山は交通の便で劣る。ちょっとした旅気分にひたれるという魅力もあったが、容易に足を運べないという不利は大きかった。そのアクセスを飛躍的に改善したのが、1883年に上野―熊谷間を開業した日本鉄道(現在の東北本線などを建設した私鉄)だった。日本鉄道の開業と同時に、飛鳥山の麓には王子駅が開設された。こうして、飛鳥山のにぎわいはさらに増していく。
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