「慎重なる楽観」で意外に脆弱じゃない株式市場 ヘッジファンドGCIの山内英貴CEOの市場分析

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――長い目で見たドルの信認というお話がありましたが、ドル相場はどうなっていくと思いますか。

今までもそうだったが、アメリカの当局は「強いドルが国益」と言いながら、緩やかなドル安を容認していくという形だと思う。これは基軸通貨国の特権だ。円の場合は円安が続くとどんどん貧乏になってしまうが、アメリカはドル安が続いてもファンディングできる。逆に、ドル高にすると、対外債務を抱えた新興国が持たなくなって、かつてのアジア通貨危機のようなことが起きるので、安定的なドル安がよい。この数年間はうまくいっていたと思う。

――今、ESG投資、SDGsの掛け声のもとで、これに関連した投資ファンドや投信の組成も盛んです。これはある種のバブルを作っていく可能性はないですか。

それよりもまず、それぞれの企業が本業の中でESGに取り組んでいくというのが本来の趣旨で、株主や債権者が事業体を誘導していくというのは容易ではない。総論では誰も反対できないが、各論に入っていく段階では、例えば定量的評価など具体的な落とし込みが簡単ではない。また、枠組み自体が何らかの投資制約になると、長期的に投資リターンを悪化させることにもなる。

投資を継続しながらリスクの分散も考える

――個人投資家へのアドバイスは?

いつも言っていることだが、資産運用は何よりも継続が大事で、許容可能な範囲でリスクはとり続けるべきということ。一方で長期の株式投資では、昨年3月のような大きな下げも常にありうるのだから、継続のためには分散が欠かせない。あらゆる資産の価格上昇が続いてきたので、当社の場合は、ショートポジションや保険の活用などオルタナティブ投資を積極的に活用していく。

リーマンショック以降の10年を分析すると、米国株に積み立て投資しておけばよかったという結果で、パッシブ運用圧勝だった。ただ、もっと長い時間軸でみると、この10年間は特殊な期間だったともいえる。これからも継続するかどうかはわからない。ここから先はK字型回復とも言われるように構造的な変革が進むので、全体のパイが成長することをリターンの源泉とするインデックス型のパッシブ運用に対して、アクティブ運用が復権するのではないかと考えている。ただし、その中でも巧拙で差が広がるのではないか。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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