感染症はなぜ広がる?人類悩ます「残念な真実」 新しく出現した感染症の6割は動物由来
森林伐採は熱帯林に集中しています。国連食糧農業機関(FAO)によると、毎年約250万平方キロ、1時間当たり東京ドーム127個分もが消失しています。熱帯林が地球の陸地に占める割合は7%に過ぎませんが、そこには地球上の生物種の50~80%が生息しています。病原体もその生物多様性の一部なのです。
アメリカ野生動物保護学会は、新興感染症の60%までが動物を介して人に感染する「動物由来感染症」と発表しています。
農業用の灌漑は宿主の絶好のすみかに
人類が定住化を始めた初期、定住場所はほぼ水辺に限られていました。そのため、水を介して感染する病気が集団発生しました。農業用の灌漑(かんがい)のために、澱(よど)んで水深の浅い水路が掘られた結果、昆虫や巻貝など病原体の宿主の絶好のすみかとなり、感染症がはびこる環境を作り出したのです。
その代表が、ハマダラ蚊が媒介するマラリアです。マラリア原虫が引き起こします。症状は発熱と悪寒ですが、錯乱などを伴うマラリア脳症を発症させることもあり、致死率は60%にも達します。
マラリアが歴史に登場するのは、紀元前1万8000年ごろ。霊長類からヒトに感染したとみられます。農業の開始と同時期に流行が始まり、農業の普及とともに勢力を増していきました。
日本でも古い文献に「おこり」と称される感染症が登場し、これはマラリアと考えられます。『平家物語』には平清盛の臨終の場面がありますが、高熱にうなされる清盛の様子から、マラリアと推測されます。日本では1960年以後、感染者は出ていません。
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