感染症はなぜ広がる?人類悩ます「残念な真実」 新しく出現した感染症の6割は動物由来

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今日でも熱帯、亜熱帯地域を中心に、100カ国以上で発生、毎年40万~100万人もの人が命を落としています。その9割はアフリカの5歳未満の子どもです。

マラリアが根絶できないのは、蚊が巧妙な対抗手段をもっているためです。数多くのワクチンの試みも成功していません。蚊を退治するために農薬がまかれていますが、これにも蚊が耐性をもって効果が薄れています。マラリア以外に、蚊は10種以上の病気を運んできます。デング熱、ジカウイルス感染症、日本脳炎、黄熱病などの感染症です。

(画像提供:KADOKAWA)

日本でも発生した「デング熱」

2014年夏、これまで日本国内ではあまり耳にしたことのなかったデング熱が、都心の代々木公園で発生しました。あっという間に全国に広がり、店頭から虫除けスプレーが消えました。

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デング熱の原因は、ヤブ蚊の仲間であるヒトスジシマカやネッタイシマカです。蚊がデングウイルスを持っていると、蚊の唾液とともにウイルスが人の体内に侵入し、デング熱に感染します。

デング熱の症状はさまざまで、突然の高熱や関節痛、頭痛、発疹(ほっしん)などがあり、重症状の「デング出血熱」になると、10~20%の感染者で注射痕から出血したり、鼻血、血便、吐血などの症状が起きます。

世界では毎年2万人以上が死亡、特に乳幼児の死亡のおもな原因となっています。ただし50~80%は感染しても症状が現れません。

実は私自身も、タイでデング熱にかかったことがあります。突然の高熱に続いて強い関節痛や頭痛が起こり、英語でbone-breaker(骨折り病)とよばれることがよくわかりました。

デング熱の世界的流行の原因には、人がヒトスジシマカを発生させやすい環境を作ってしまったことに加え、地球温暖化の影響もあります。環境省によると、デング熱を媒介するヒトスジシマカの分布は、年平均気温11度以上の地域とほぼ一致しています。

日本のこの蚊の分布は、1950年当時は福島県と栃木・茨城県の県境が北限でしたが、2000年以降は秋田北部から岩手県へ広がり、2010年には青森県内ではじめて確認されました。温暖化の影響をまとめた環境省の報告書では、2100年までには北海道まで拡大するという予測もあります。

(画像提供:KADOKAWA)
石 弘之 ジャーナリスト

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いし ひろゆき / Hiroyuki Ishi

1940年東京都生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞入社。ニューヨーク特派員、編集委員などを経て退社。国連環境計画上級顧問、東京大学大学院教授、ザンビア特命全権大使、北海道大学大学院教授などを歴任。この間、国際協力事業団参与、東中欧環境センター理事などを兼務。国連ボーマ賞、国連グローバル500賞、毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。主な著書に『感染症の世界史』『鉄条網の世界史(共著)』(角川ソフィア文庫)、『環境再興史』『砂戦争 知られざる資源争奪戦』(角川新書)、『地球環境報告』(岩波新書)など多数。

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