相手にきっと伝わる「わかりやすい説明」5カ条 池上彰、佐藤優が語り合う「伝え方のコツ」
池上:そうですね。そして、③抽象的な概念を図式化するというのは、概念を言葉で説明しても、いまひとつ理解しにくい、そんなときに□や○、矢印、ピクトグラムなどを使って図式にするものです。テレビ業界では、映像や写真で伝えられないものを「絵にならない」なんて表現しますが、そういうものだって視覚化して「目で見てわかる」かたちに変えることは可能です。
佐藤:図式化するうえで、コツはありますか?
池上:そうですね。まず自分のなかに「絵」を思い浮かべることが最初の1歩です。絵には言葉ほど多くの要素は盛り込めませんから、絵を思い浮かべようとすると物事の枝葉がそぎ落とされ、本質が浮き彫りになってくることがあるものです。
メッセージをパズルのピースに分解する
佐藤:会話においては、まず自分自身が言葉だけでなくビジュアル的にも物事をとらえる、そんな想像力を働かせることも重要ですね。
池上:まさにおっしゃる通りです。そして④は、「分ける」ことは「わかる」こと。まずは説明したいことを、ひとつひとつの細かい要素に「分ける」ことから始めましょう。分けてみると、きっと「これはいらないな」というものも出てくるので取捨選択をします。そして残った要素たちを、「最初はこれ、次はこれ、その次はこれ……」という具合に構成する。言い換えれば、順序立てて並べ替えるということです。このように整理して伝えることが、相手が「わかる」ことにつながります。
佐藤:なるほど。雑多な情報を整理せずに伝えている、そのために「あなたの説明はわかりにくい」と思われている人も多いでしょうね。
池上:はい。自分が整理できていないものを、人が整理して頭に入れることはできないというわけです。そして最後、⑤バラバラの知識をつなぎ合わせる。知識とはジグソーパズルのピースのようなものです。つなぎ合わせてみると、ひとつひとつのピースだけでは見えてこなかった大きな像を結ぶことがある。その像を示して見せたときに、「ああ、なるほど!」という、より深い理解を相手にもたらすことができるのです。