相手にきっと伝わる「わかりやすい説明」5カ条 池上彰、佐藤優が語り合う「伝え方のコツ」
池上:はい。まず皆さんにお伝えしておきたいことがあります。それは、「自分自身が理解していないことは、人にもうまく伝えられない」ということ。当たり前と思うかもしれませんが、理解しているようで理解していない、だからいくら言葉を並べてもわかりやすい説明にならない、というケースが多いようなのです。
佐藤:たしかに、表層的に言葉をなぞっているだけで、まったくこちらに届いてこない説明というのは、たいてい説明している本人が理解していないものですね。学生にもよく見られるパターンです。
話をかみ砕く、置き換える、絵にする
池上:「まず、自分自身が理解した」うえで、「わかりやすい説明」をするための5カ条があります。①難しい言葉をわかりやすくかみ砕く、②身近な例えに置き換える、③抽象的な概念を図式化する、④「分ける」ことは「わかる」こと、⑤バラバラの知識をつなぎ合わせる、というものです。
佐藤:大変興味深い極意ですね。それぞれの意味するところを、この記事の読者にもわかるよう、詳しくお教えいただけますでしょうか。
池上:はい。まず、①の「難しい言葉」というのは多くの場合、熟語です。それをわかりやすくかみ砕くということ。熟語は物事を一言で言い表せて便利なものですが、その言葉を知らない人にとってはまったく不親切なものです。
佐藤:何気なく使っている自分のほうも、その熟語の成り立ちを意外と知らなかったりすることもある。今は辞書を引く習慣が廃れつつありますが、そういうときこそ国語辞書や漢字辞典の出番ですね。
池上:そうですね。「この熟語をわかりやすくかみ砕くとしたら、どうなるかな?」という発想をもって辞書や辞典を引いてみれば、その言葉に対する自分の理解がより深まり、人にもわかりやすく説明できるようになるでしょう。そして②の身近な例えに置き換えるというのは、いうなれば数字が大きすぎたり小さすぎたりして想像しづらいものを、より実感をもって理解しやすい事例に当てはめてみる、ということです。
佐藤:よく「この広大な敷地は東京ドーム○個分」といった表現を目にしますが、これも池上さんのおっしゃる②身近な例えに置き換える、を用いた伝え方ですね。ほかにも、たとえば国家予算を家計に置き換えるなど、よく知っているものとの対比で説明すると、かなりわかりやすくなる。