社長のいない株主総会、深まる任天堂の苦悩
環境変化に対応遅れ、経営内部の規律にも乱れ
一方で、任天堂が年末に発売する、「Amibo(アミーボ)」というNFC(近距離無線通信)内蔵のフィギュアと連動させた新作ゲームについては、企画開発本部長である高橋が説明した。これに宮本は一切関知しておらず、株主総会のときもアミーボについては言及しなかった。あくまでも来年にかけてリリースが予定される、自身が手がける「マリオ」「ゼルダ」シリーズの新作タイトルに触れるのみだった。
山内が実質経営に関与していたと見られる2010年ごろまで、こうした超縦割り組織は機能していた。2000年に山内は、経営企画室長としてソフト開発会社・ハル研究所の社長だった岩田に後任の座を譲ったが、2011年初発売の携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」までは岩田に助言を送っていたとされる。12年末に発売された据え置き型ゲーム機「Wii U」の開発に、山内は一切タッチしていない。そしてWii Uは目下、任天堂が業績不振にあえぐ象徴となっている。
無料で遊ばす課金型の「F2P」
任天堂が復活に向けて苦悶する間にも、ゲーム業界はめまぐるしいスピードで変わり続けている。任天堂が得意とするゲーム1本を6000円程度で販売するパッケージ型から、無料で遊んで課金する「F2P(=Free to Play、原則無料)」へと、急速に移行中だ。
F2Pモデルはスマホゲームのみならず、ソニーの「プレイステーション4」や米マイクロソフト「XboxOne」でも広がりつつある。ゲームソフトメーカーもスマホ対応やF2Pモデルに舵を切っており、任天堂だけが取り残されているように見えてくる。(敬称略)
(撮影:梅谷秀司)
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