プロ野球「無観客キャンプ」で起きた沖縄の異変 キャンプイン直前の無観客化で経済的ダメージ

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今季、沖縄県では一軍、二軍合わせて9球団が13カ所で春季キャンプを行っていた。5球団が5カ所で行っていた宮崎県や。2球団が2カ所で行っていた高知県よりはよりダメージが大きかったのだ。

各キャンプ地を回ってみて、筆者は新型コロナ禍を契機として、春季キャンプのあり方を見直すべきではないかと考えた。

NPB球団にとって春季キャンプは「収益事業」ではない。公式グッズの販売などの売り上げは多少あるが、基本的には経費をかけて選手を鍛錬するトレーニングだ。一般的には春季キャンプのコストはオープン戦の収益で賄ってきたと言われる。緊急事態宣言発出中はオープン戦は無観客になるが、解除されれば収益は上がる。春季キャンプの収支は持ち出しになるだろうが、そのダメージは限定的だ。

しかし、受け入れ側の市町村は、春季キャンプでの飲食、物販の売り上げに加え、宿泊や繁華街での飲食などの売り上げもほとんどなくなった。今年は2月に向けて感染症対策も含め、万全の準備をしていたが、無観客によってそうした準備も含めて水泡に帰した。その損失は非常に大きかった。

各地の自治体や観光協会は、春季キャンプの前から受け入れ態勢を整備している。キャンプが始まれば、職員を派遣しグラウンド整備や場内整理などの業務で球団をサポートしている。それだけ春季キャンプの経済効果が大きいからだ。新型コロナ禍によってそうした努力も空しいものになった。

春季キャンプを「地元との共同事業」に

端的に言えば、球団の春季キャンプと、受け入れ自治体のキャンプ地での物販やサービスは別個の事業であり、両者に補完関係はない。しかし地元商店街や住人は、街々にフラッグを掲げ、全力で歓迎の意を表している。その気持ちも含めて、今年、受け入れ側が喪失したものは非常に大きい。

この状況が落ち着けば、球団側はキャンプ地でオープン戦やファンサービスイベントを行うなどのフォローを行うべきだろう。

さらに言えば球団は春季キャンプ地を「第2のフランチャイズ」ととらえて、フランチャイズからのツアー客を誘引したり、町おこし事業に積極的に関与するなど、春季キャンプを「地元との共同事業」として再構築することを考えるべきではないか。

災い転じて福となすではないが、NPB球団は新型コロナ禍を春季キャンプのあり方を見直す転機にすべきだと思う。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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