集団的自衛権、黒幕の米国が考えていること 日米安保体制はますます米国の思うまま
集団的自衛権論議が続く中、「米国は日本を守るが、日本が米国を守らないのはおかしい」といった日本に対する安保ただ乗り論は今も盛んに米国から発せられている。最近、筆者が目にした主な意見をいくつか紹介してみよう。
「従来の憲法解釈では、日本の護衛艦が攻撃されたら米国は守るが、米国の艦船が攻撃されても日本は対処できない。日本が、北朝鮮から米ハワイなどに向かう弾道ミサイルを迎撃せずに無視するなら、米国民は『本当に同盟国なのか』と思うのではないか。」(6月6日付の朝日新聞記事でのケビン・メア氏=元米国務省日本部長の発言)
「ワシントンは1951年以来、東京と相互的な安全保障条約を結んできた。しかし、日本は米国や米軍を守ることにコミットしていない。事実、日本軍は戦時であってもワシントンを支援することを禁じられている。たとえその戦争が日本の防衛のためであってもだ」(6月2日付のロイター通信のオピニオン記事での米国経済戦略研究所のクライド・プレストウィッツ所長の発言)
元海兵隊大佐が語る日本への不満
日本戦略研究フォーラムのグラント・ニューシャム上席研究員(元米海兵隊大佐)は私の取材に対し、痛烈に日本に不満をぶつけた。米国の本音が垣間見えているため、少し長くなるが、同氏のコメントを紹介する。
「日本がわずかな不動産と少額な資金を提供することで得ているものを考えてみてほしい。日本を防衛するという(米国による)約束とともに、日本は(米軍という)世界最強の軍事力のサービスを受けている。これは、どんな国もかつて受けたことがないほどの『最良』の取引だ。私は日本がこのことをきちんと認識しているかどうかが分からない」
「ロンドンのロイズ(保険市場)に電話をして、このような保険について聞いてみてほしい。彼らは一通り笑い終えた後に、毎年約1000億ドル(10兆円)ほどの保険の見積価格を提示するだろう。これこそが日本が過去60年間、毎年享受してきた『防衛保険』の額なのだ。これだけの金額を日本政府は他のことに費やすことができたのだ」
「人々は日本の思いやり予算、つまり、ホスト・ネーション・サポート(接受国支援)が何百億ドルだと思っているかもしれない。しかし、実際はあきれるほどに少ない。せいぜい多くて50億ドル(5000億円)だ。日本の公共事業プロジェクトでの不正行為の額と同額程度だ。この額で日本は何を得ているのか。日本を守る米軍だ。全然悪い取引ではない」
「この種のアンバランスな関係はいつまでも続くものではない。日本は自らの防衛面でもっとやり始めるべきだ。それは、より対等な同盟国にもつながる」
「日本と米国のそれぞれの選択肢(オプション)を誰もめったに考えようとしないのは、驚くべきことである。日本は実際、米国以外にまともな同盟国を持っていない。核兵器に絡む選択肢も確実に有していない。日本は米国以外に同盟国がおらず、他に真の友人もいない。それでも、日本政府はしばしば良い選択肢があるかのように振る舞っている。米国は日本にある基地から相当な恩恵を受けている。それらはとても有益だが、代わりがきかないものではない。米国は常に別の国とうまくやっていける。米国はカムラン湾やフィリピンなど一つの場所で基地を失っても、他の場所で基地を開設できる機会を有している」
「日本が米国に便宜を図っているという考えはナンセンスだ。日本は防衛協力から何を得ているか直視すべきだ。米国は日本に代わって犠牲を強いられていることを認識している。日本はそのことを理解すれば上手くいくだろう。米国人に『ありがとう』と言うことがとても役に立つことだろう」
少し長くなったが、上記のニューシャム氏のコメントを読んで反感を持った日本の読者もきっと多かっただろう。日本は公表ベースでは2014年度6711億円もの在日米軍駐留関連経費を支出している。
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