新幹線「東京ー札幌間」、時間短縮に何が必要か

制度の壁はクリア、残る課題は時間の壁だ

交通政策審議会の2012年4月の資料は、国土交通省が想定した札幌開業時の所要時間として、青函共用区間における時速260km化で4時間43分、さらに盛岡―札幌間時速320km化で4時間33分の数字を記している。一方、これまでの東京―札幌間の数字が5時間1分。そこから現状の青函速度向上で6分、さらに上野―大宮間で1分、盛岡―新青森間で約5分、新函館北斗―札幌間で約5分と引いてゆくと4時間44分となる。

少し差があるとは言え、いずれ青函共用区間を本来の速度とし、さらにJR東日本は東北新幹線の時速360km営業運転を目指してALFA-Xを製作し、2019年5月から仙台―新青森間を中心に試験を繰り返している。すでに時速400kmを達成し、北海道へも乗り入れた。営業時の時速360km区間をどこにするか等の具体的な話はまだだが、実用量産化されれば4時間30分は達成できるのだろう。

「制度の壁」はクリアできたのか

ところで、これまで整備新幹線の速度向上は難しいとされてきた制度の問題は、どうクリアされたのか。

前夜降った雪を舞い上げて朝一番の「はやて91号」 が通過していく (2021年1月2日、木古内ー新函館北斗間、写真:久保田敦)

新函館北斗―札幌間については、これまでの整備新幹線のスキームにより、国や自治体の負担で仕様を変更しようとするなら、全幹法(全国新幹線鉄道整備法)に定めるとおり、大臣が整備計画の変更を決定しなければならない。それには交通政策審議会への諮問まで遡る必要が生じる。予算確保にも国会を経なければならない。

一方、盛岡―新青森間はすでに開業している路線だから、そもそも全幹法が適用されない。全国新幹線鉄道整備法の名のとおり整備のための法律であるから、開業をもってその枠が外れているのだ。

こうしたことから、両線の速度向上については「全幹法のスキーム外でやるのは結構」と整理され、希望する各JRが費用負担をするならば可となったのである。

全幹法では、運行事業者が開業後30年にわたり線路使用料(貸付料)を支払うことも定めている。その額は固定で、したがって開業済みの盛岡―新青森間については、速度向上で需要が増えることを理由に貸付料が値上げされることはない。見込まれる増収分はインセンティブと捉えることができ、よって自己資金を投じる速度向上にも積極的になれると解釈できよう。ただし、北海道新幹線が新函館北斗まで開業した際、根元受益分として従前の貸付料とは別途年額22億円が設定された。札幌延伸という他社からの恩恵としては、改めて考えられるのだろう。

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