ソフトバンクG、10兆円ファンド好調が隠す課題 ファンドの含み益は2兆円に急拡大した

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いくらビジョンファンドが好調でも、SBGの保有株式価値に占める割合はいまだ2割に満たない。一方でアリババ株は株価が下がっても半分を占める。これまでも「株価の動きには一喜一憂しない」と述べてきた孫社長だが、会計上の損益よりも保有株式価値を重視しているだけに最大の懸念点だろう。

一方の上場株投資ファンドは、2020年3月に発表した4.5兆円の資産売却プログラムで生まれた余剰資金の運用手段として昨夏に始まったものだ。資産の売却・資金化は結果的に計画を上回り5.6兆円まで進んだ。

孫社長は2020年11月の決算説明会で、「AI革命を支援する会社なのに上場会社は(投資の)対象外だなんて、誰が決めたんだと。私は上場しようがしていまいが、活躍する会社に投資していく」と強い口調で語っていた。だが、今回は決算説明のプレゼンテーションで一言も触れなかった。

明らかな“トーンダウン”

今回の決算で明らかになった12月末時点の上場株投資事業のパフォーマンスは、1000億円強の赤字。中長期の投資とはいえデリバティブ取引などで大きな損失を出している中、今後の投資方針をどう考えるのか。

2020年11月に行われた決算会見では「GAFA」を中心としたアメリカのIT大手など上場株への投資について、孫正義社長が熱く語っていたが・・・(記者撮影)

記者が問うと孫氏は、「『GAFA』のようなエース級の企業に投資するよりも、ビジョンファンドの投資先のほうが(企業価値の)伸び率は大きい。資産売却プログラムの資金使途として優先すべきはビジョンファンドだ。そこで投資するまでの“バッファ”の時間で上場株を運用する」と返答した。明らかな“トーンダウン”である。

ビジョンファンドが大きな利益を出したことで、孫社長はベンチャー企業へのリスクマネー供給に対する熱が再燃したということか。上場株投資は単なるマネーゲームにも見えるが、投資規模はすでに2兆円を超える。いまだに「テスト的運用だ」と孫社長は言うが、その狙いについては投資家などステークホルダーに対する一層の説明が必要だろう。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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