ソフトバンクG、10兆円ファンド好調が隠す課題 ファンドの含み益は2兆円に急拡大した
ビジョンファンドのようなベンチャーキャピタルはベンチャー企業に投資し、企業価値を引き上げて株式上場させ、市場で売却して利益を生むのが定石だ。ソフトバンクグループの場合、ビジョンファンドの投資先も含め、今年度に上場したり、売却した“金の卵”は11社に上る。これまで毎年1~3社程度だった水準から一気に増えた。
すでに新規投資を終えた1号ファンドの投資先は続々と上場が増える見込みだ。「年間10~20社というリズム感でやっていきたい。ゴールドラッシュはこれからだ」(孫社長)。
一方、今後の投資成績を左右するのが昨秋から運用が始まった2号ファンドだ。ウィーワーク問題などを受け外部投資家が集まらず、SBGの自己資金での運用となった。すでに28社に約43億ドル(約4500億円)を投資し、株価や公正価値の上昇によって、保有資産は12月時点で約93億ドル(約9700億円)まで膨らんだ。
「1号ファンド発足時よりも仕組み作りが進み、数百人のファンドマネジャーを医療やフィンテックなどの専門分野別のチームに分けた分業システムが整った。これまでは2週間に1回海外出張に行っていたが、この1年はまったくない。むしろ朝から真夜中までぶっ続けでズーム(ビデオ会議ツール)のミーティングを入れていることで効率が格段に上がった。2号ファンドの投資先は、パイプライン(正式な投資契約前の会社)も含めると40社近くまで増えている」(孫社長)
保有するアリババ株が急落
今回の決算会見で、終始ビジョンファンドのパフォーマンスの高さを強調した孫社長だが、一方であまり時間を割かなかった話題もある。中国アリババグループ株の行方と昨夏に発足した上場株の投資ファンドだ。孫社長が3兆円の純利益に満足しないのもここに理由があるのだろう。
アリババの株価は昨秋、スマートフォン決済アプリ「アリペイ」などを手がける同社の関連会社アントグループの上場が延期されたことを受け大きく下げた。中国の規制当局が金融リスクを指摘し、待ったをかけたのが要因だとみられる。アリババの株価が急落したことで、SBGの保有株式価値は2020年9月末に30.9兆円だったのが、同年12月末には26.9兆円まで減少した。
これに関して孫社長は、「アリババに関しては多くの方にご心配をおかけした。中国のネット業界では今、初めてかもしれないくらいの大きな政策議論が行われている。ただ規制強化は中国の健全なネットの繁栄には長期的にはプラスだ」と述べるにとどめた。
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