ティーパーティ躍進、共和党指導部の憂鬱 予備選挙で大物のカンター氏がまさかの敗北

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もともと、ティーパーティ派は減税、財政均衡、小さな政府を政策目標に掲げる“ワンイシュー政治集団”だったが、今回の選挙では大企業批判、移民政策批判から同性婚への反対など、社会問題にまで主張の幅を広げ、保守層の支持拡大を狙っている。

ブラット候補の勝因はカンター院内総務と大手金融機関との癒着を批判して住民の支持を得たことであった。同候補は勝利演説の中で「私は(金融機関救済という)クローニーキャピタリズム(縁故資本主義)政策をやめさせるために戦う」と語っている。

注目の6月24日

こうしたティーパーティ派の勢力拡大に対して、共和党指導部は穏健派候補を支持し、対立姿勢を強めていた。なぜならティーパーティ派は党内では多くの支持を得ても、本選挙ではその過激な政策から中道派や無党派の離反を招く懸念があるからだ。ティーパーティ派候補が政府の移民政策を批判し、強硬な政策を主張すればするほど、ヒスパニック系住民の票が共和党から離れていく。

当面の焦点は上院予備選挙の動向だ。ジョージア州ではティーパーティ派候補が現職を破って勝利し、ケンタッキー州でも接戦を演じている。ミシシッピ州でも現職の穏健派議員とティーパーティ派候補の決選投票が6月24日に行われる。現職の勝利が間違いないと思われている同州でティーパーティ派候補が勝てば、無党派層の反発を招き議席を失う可能性も出てくる。

今回の中間選挙で共和党は下院では勝利が堅く、上院でも過半数を占める可能性がある。しかし、ティーパーティ派候補が上院予備選で勝利すれば、逆に取りこぼしの州が出てきて、せっかくのチャンスを潰してしまうかもしれない。共和党の内部対立で漁夫の利を得るのは、民主党候補かもしれない。

週刊東洋経済2014年6月28日号〈6月23日発売〉掲載の「核心リポート04」を転載)

中岡 望 ジャーナリスト

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なかおか・のぞむ / Nozomu Nakaoka

国際基督教大学卒。東洋経済新報社編集委員、米ハーバード大学客員研究員、東洋英和女学院大学教授などを歴任。専攻は米国政治思想、マクロ経済学。著書に『アメリカ保守革命』。

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