日本はマシ?「コロナ規制で暴徒増」欧州の混迷 ドイツは規則順守を拒否する人の刑務所を開設

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ルペン氏は2月1日、フランス政府が打ち出したコロナ対策のための国境封鎖措置について、決断が遅く「無駄な時間を過ごした」と非難し、「私は当初から国境閉鎖が最も効果的と主張してきた」と政府を非難した。

フランスでは2018年11月から長期にわたって、反政府運動の「黄色いベスト運動」が続き、マクロン氏が公約に掲げた失業率の抑制はコロナ禍で挫折した。2017年の下院選挙で圧倒的多数の議席を獲得した自身が立ち上げた中道の共和国前進(LREM)は、今は過半数割れ状態にある。

昨年秋、イスラム分離主義のテロが連続して起き、英国のEU離脱後、反EUのポピュリズムがEUでは息を吹き返している状態だ。

EUのコロナ・パンデミックの起点となったイタリアでは、2月5日時点で累計8万9820人の感染死亡者が記録された。1月26日にはコンテ首相が辞任し、暫定政権の首相に欧州中央銀行前総裁のマリオ・ドラギ氏が就任する流れにあるが、国民の政府への不信感は高く、政権運営は容易でないと見られている。

イタリアのマッタレッラ大統領は「今後、数か月がウイルスに打ち勝つか敗れるかの瀬戸際で、機能する政府が欠かせない」と述べている。

有効な対策を打てないEUへの不信感も高まる

実はEUに対しても不満の声があがっている。まず、イタリアで1年前に感染が本格化した当時、EUは迅速な対応を取らず、感染症対策は各国に委ねられた。特にEU域内では人と物の自由な移動が認められていることから、感染の水際対策としてはEU域外からの入国を禁止するのが最も有効と専門家が指摘していたが、今日まで実行されていない。

EUとしてはコロナ禍の経済ダメージからの復興基金の創設とワクチン確保しか行っていない。ワクチン確保で遅延が明らかになる中、EUはあてにならないとして、ハンガリーがロシア・ワクチンの受け入れを表明、スペインも拒まないとして、EUのワクチン政策の枠外の動きを強めている。イタリアが今後、中国ワクチンを受け入れる可能性もある。

つまり、コロナ危機に対して、EUが有効な対策を打てないという不信感が高まっている。

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