スーチー氏拘束にロヒンギャが「歓喜」する事情 ミャンマー人の間には彼らへの「不公平感」も

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ヒンドゥー教徒の民間人99人を殺害したとして、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルからも「ミャンマー軍がラカイン州北部で行った人道に対する罪と同じように、ARSAの責任を問うことは重要だ」と強く非難されている。

つまり、規模や使用する武器などに違いがあれど、ロヒンギャの武装勢力側からの襲撃などは国際社会で大きく報じられることは少ない一方、ロヒンギャには国際組織などから多くの支援や援助活動が行われていると指摘するミャンマー市民は少なくない。「不公平感」が増し、ロヒンギャへの不満が高まる一因ともなっているのが現状だ。

ヤンゴン近郊の路上で茹でとうもろこしを売る女性の頬にはミャンマー女性伝統の日焼け止め「タナカ」が塗られている。実はロヒンギャにも同じように「タナカ」を利用する習慣を受け継ぐ人々がいるという(筆者撮影)

ミャンマー人はロヒンギャへの関心が薄い

今回、民主主義に向けて連帯を強めるミャンマー人のSNSへの投稿には、スー・チー氏解放に向けての熱い思いはあふれるものの、国軍が権力を持つことでのロヒンギャへの悪影響を懸念する声などは目立たない。一方、国連や各国のリーダー、欧米メディアなどは相次いでミャンマーの民主化が阻まれることなどへの非難の声を強めると同時に、ロヒンギャを巡る状況が「悪化」することへも強い懸念を示している。

「私たちはこの地球上で最も残酷な軍隊と立ち向かっているのです。彼らは武器と権力を持っています、それは私たちの安全を脅かすものとして」――。

仏教徒であるミャンマー女性がSNS上で力強く発信したこの言葉。その“残酷な軍隊”による武力弾圧に苦しんだのは、ロヒンギャも同じだ。歴史に翻弄され、政治や宗教、民族で複雑に絡み合った糸が複雑化させているミャンマー情勢。宗教は違っても、安住の地を追われ、さまようイスラム教徒であるロヒンギャたちに、ミャンマーの民主化に向けたこの思いが向けられるようになるには、まだ時間がかかるのかもしれない。

海野 麻実 記者、映像ディレクター

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うんの あさみ / Asami Unno

東京都出身。2003年慶應義塾大学卒、国際ジャーナリズム専攻。”ニュースの国際流通の規定要因分析”等を手掛ける。卒業後、民放テレビ局入社。報道局社会部記者を経たのち、報道情報番組などでディレクターを務める。福島第一原発作業員を長期取材した、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『1F作業員~福島第一原発を追った900日』を制作。退社後は、東洋経済オンラインやYahoo!Japan、Forbesなどの他、NHK Worldなど複数の媒体で、執筆、動画制作を行う。取材テーマは、主に国際情勢を中心に、難民・移民政策、テロ対策、民族・宗教問題、エネルギー関連など。現在は東南アジアを拠点に海外でルポ取材を続け、撮影、編集まで手掛ける。取材や旅行で訪れた国はヨーロッパ、中東、アフリカ、南米など約40カ国。

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