スーチー氏拘束にロヒンギャが「歓喜」する事情 ミャンマー人の間には彼らへの「不公平感」も

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また、中東の衛星テレビ局アルジャジーラでも、「スー・チー氏はロヒンギャの問題についてだんまりを決め込みました。”ロヒンギャ”という言葉さえ使いませんでした。かつて私たちは、彼女の成功を祈り、彼女をクイーンであるかのように称えました。しかし2017年以降、私たちは彼女の真の性格に気付かされたのです」とする、同じく難民キャンプの男性の声が報じられた。男性は「私たちは今、スー・チー氏が権力から転覆させられていることに、同情の気持ちも湧きません」とばっさり切り捨てている。

これには、2019年に行われたロヒンギャに対する強姦や殺人などの残虐行為に関する国際刑事裁判所(ICC)の公聴会で、スー・チー氏が「過剰な武力行使があった可能性はある」と認めながらも、殺害は意図したものではないなどと主張、国軍を擁護してジェノサイドを否定する発言と受け止められた背景がある。国内世論と外交との間でのバランスに配慮した結果として、苦肉の発言だったと見られるものの、ノーベル平和賞を取り消すべきではないかなどの声も上がり、ロヒンギャの人権侵害問題に十分に対処していないとの批判も強まる結果となった。

期待していたからこその裏切り

こうした背景から、期待していたからこそ、裏切られた、見捨てられたという思いを強く募らせてしまった形のロヒンギャ難民たちの複雑な感情。一方で、国軍が権力を手にすることでロヒンギャを取り巻く環境はますます悪化するのではと懸念する声も上がっており、今後の行方が見えない中で不安と恐怖を募らせる難民たちも少なくない。

現に、国連事務総長報道官は会見で、ロヒンギャをめぐり「(人道)状況が悪化することを恐れている」と懸念を示しているほか、ミャンマー国軍によるクーデターを受け、国連安全保障理事会の緊急会合が開かれ、解放を求める声明の取りまとめに向けて各国で調整が進められている段階だ。

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