軽自動車の「電動化シフト」が何とも悩ましい訳 値上げ必至で低価格という最大の武器を失う

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宮城県仙台市で野菜農家を営む平松希望さん(28)は軽トラックと軽自動車の2台を所有する。野菜の収穫から納品までほぼ1日中、乗っているという。

「価格が安い、税金も安い、使い勝手がいい」と乗用車と比較した軽の優位性を説明。「価格が上がると軽自動車の意味がなくなる」と述べた。田舎はぬかるみや雪道もあって軽トラには馬力が求められ、EVについてはそうした部分に不安があるとした。

「軽」をEV化すると100万円~200万円の値上げになる

全軽自協によると、20年の国内軽自動車販売の電動車比率は約32%。しかし、その全てが発進時や加速時にエンジンをモーターが補助するマイルドハイブリッドと呼ばれる簡易式ハイブリッド技術を使用している。

トヨタの「プリウス」などに搭載され、大型バッテリーや高電圧モーターを必要とするフルハイブリッドに比べると価格を抑えることができる半面、二酸化炭素(CO2)排出の削減効果は劣る。 

東海東京調査センターの杉浦誠司アナリストによると、軽自動車をEV化した場合は100万円-200万円、フルハイブリッドシステムを搭載した場合は50万円前後の値上げになる。

一方、カノラマの宮尾氏はバッテリーメーカーとのアライアンス次第で価格は抑えることが可能と指摘。中国の上汽通用五菱汽車が50万円弱の小型EVを発売し、現地でベストセラーとなっていることを例に挙げ、バッテリー調達に長けた中国系格安EVが「日本の軽自動車市場を席巻し、日系軽自動車メーカーは壊滅する」という「最悪シナリオ」もあり得るとの見方を示した。

全軽自協の堀井氏は、政府支援などによって安価な車載用電池が開発されることで、軽自動車が「単に高くなるから売れない、存在価値がなくなるとはならないと思うし、やはり環境にしっかり必死で合わせていくのだろうと期待している」と述べた。 

著者:稲島剛史、竹沢紫帆

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