香川真司の「新天地探し」がここまで難航した訳 大物サッカー選手が直面する「30代の壁」の正体

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間もなく38歳になる彼や37歳の長谷部誠(ドイツ1部・フランクフルト)、34歳の岡崎慎司(スペイン1部・ウエスカ)を見ればわかるとおり、日本人のベテランは年齢を重ねれば重ねるほどサッカーへの貪欲さが増し、高い領域を目指す闘争心が高まる印象だが、欧州関係者の価値観から見ると奇妙にも映るらしい。

長谷部も本人の意思に関係なく「今季限りで引退」という報道を繰り返しなされているが、外野からはそう決めつけられがちなのだろう。ドイツ代表を見ても、2019年にヨアヒム・レーブ監督がトーマス・ミュラー(ドイツ1部・バイエルン・ミュンヘン)ら30歳前後の3人に引退勧告をするという出来事が起きている。30代選手が依然として絶対的主力に君臨している日本代表には考えられないことだ。

香川自身も現実の厳しさを熟知していたからこそ、「これ以上、空白期間は延ばせない」と考え、他国に視野を広げたのだろう。かつて名を馳せたドイツやトルコ、中東、古巣のJ1・セレッソ大阪からもオファーがあったようだが、「これまでほかの日本人選手が誰1人、実績を残していない新天地に行きたい」という思いが少なからずあったのではないか。そんな思惑と冒頭のような恵まれた条件が合致し、今回のPAOK移籍が実現した。

トップ下での起用が有力視

現地ではメディアを中心にカガワフィーバーが起き、大歓迎ムードだというから、本人も気分よくリスタートを切れたのはないか。ポジションもドルトムント時代に最も輝いたトップ下での起用が有力視されている。そこでゴールに絡む仕事を見せつけて異彩を放ち、完全復活を印象づけることができれば、彼自身が熱望する日本代表復帰も見えてくる。

2022年カタールワールドカップまで1年半。コロナ禍でまだ2次予選も再開されていないが、チーム作りが中断していることは、ここからの巻き返しを期す香川にとっては追い風かもしれない。

「体力や精神力を高水準でキープできれば、30歳を超えても好プレーを見せられる選手は世界に数多くいる。カガワは国際的経験を積み重ねたクオリティの高い選手。ケガさえなければ35歳まで十分戦える」

2019年1~6月に所属したトルコ1部・ベシクタシュを指揮したセノール・ギュネシュ監督(現トルコ代表)も太鼓判を押していた。世界中が注目する名アタッカーの再浮上を楽しみに待ちたい。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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