デキる人が実践「自己演出力」を身につけるコツ 考え方1つで「人間関係」の悩みも解消される

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仕事をRPGと思うようになり、思わぬ効用があった。仕事での失敗や配慮の足りなかった部分を人に指摘されると、かなり堪えるものだ。それが図星を指されていたりするとダメージが大きい。自分が全否定されたような気がしてくる。

若い学生諸君は、就活に失敗したり、失恋をしたりすると自分が「全否定」された気持ちになり、絶望的になっていることも少なくない。

意中の会社があり、そこを目指して就活に集中していれば、落ちたときは「全否定」された気持ちになるだろう。かねてより恋焦がれていた人に告白し、呆気なく袖にされれば、やはり全否定された気持ちになる。

だが、果たして自分を全否定されたのだろうか――。私は俳優を演出しながらこう考える。「今回の役が上手く演じられなくても彼は全否定されたわけではない」と。

まったく別の役で、名演技を見せることもある。逆にすべての役をうまく演じることのできる人もいない。色んな役の演じ分けの上手いロバート・デ・ニーロであっても、味を見せているとは言えない役もやっている。

俳優は、稽古場で演出家にダメを出され、何度やってうまくいかなくても、全否定されたわけではない。その役との相性が悪かっただけである。

最近は、学校の先生でも一度管理職になった後に、教えるだけの平教師に戻る人も少なくない。教えることが好きで先生になった人には、管理職に向かない人もいる。年齢が上がるに連れ一度は人並みに管理職の試験を受けたとしても、である。

考え方1つで仕事や人間関係も楽に

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管理職ができないことは、その先生を全否定したことにはならない。管理職という「役割」に不向きだっただけである。失恋も同じだ。この人の彼氏、彼女としては不適格だった、ご縁がなかったということにすぎない。別の相手役がどこかにいるはずだ。

考え方1つで、仕事や人間関係の悩みが、随分楽になりはしないだろうか。私のその考えは、これまで多くの学生や若者に説いてきて一定の効果があった。就活や失恋で必要以上に傷つかない術といってよい。

「ある局面のロールを否定されただけで、私のすべてを否定されたのではない」と思えば、気分転換も楽である。私自身も「RPG」と考えることで、気持ちの切り替えが早くなった。

コロナ禍で、成人式が延期、中止になったり、就活が変則的になったりと、大変な目に遭っている若い人たちに、少しでも参考になればと思う。

竹内 一郎 宝塚大学・東京メディア芸術学部教授

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たけうち いちろう / Ichiro Takeuchi

1956(昭和31)年福岡県久留米市生れ。劇作家・演出家。横浜国立大学卒。博士(比較社会文化、九州大学)。さいふうめい名義で『哲也 雀聖と呼ばれた男』の原案を担当。2006(平成18)年、『手塚治虫=ストーリーマンガの起源』でサントリー学芸賞を受賞。著書に『人は見た目が9割』『やっぱり見た目が9割』『ツキの波』など。

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