デキる人が実践「自己演出力」を身につけるコツ 考え方1つで「人間関係」の悩みも解消される

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私は2つの大学で、演劇を専攻していない学生に、演技入門のような授業をやっている。科目名は「非言語コミュニケーション」である。

学生の多くは、普段コミュニケーションをメールと声だけでやっている。私は台本を使い、表情、アクション、声(特に抑揚)など、身体全体を使って、情報のキャッチ・ボールをして貰う。

最初は学生たちも戸惑っている。照れてしまって、動けない人もいる。私は「自分とは思わないこと。役が求めていることを無責任にやってください」とアドバイスする。

やがて「面白い」という学生が出てきて、少しずつみんなの羞恥心が減ってくる。授業の時間だけ「ロール」をやるのだと割り切れば、普段の自分なら恥ずかしいと思う台詞も言える。表情も豊かになる。頭を使って「ロール」をやっていれば、その時間は嫌なことも忘れる。

精神衛生にも良い。やがてゲームになってくるのである。現代の若者も、きっかけさえあれば闊達(かったつ)に動くものである。

ロールをやること=自分を演出すること

授業で演技入門をやることで、他人の表情をよく観察するようになったという反応がたくさんある。非言語情報を身に着けるには、観察が第一歩である。観察する気持ちで、周囲を見ていれば、自然と身に着くことも多い。半年の授業で、毎年見違えるように変わる学生が数人はいる。

少なくとも、非言語情報も情報のうちと考えて、行動している人とそうでない人では大きな差がある。それが「自分を演出する感覚」あるいは、「自己プロデュース力」となってくる。

自分を演出すると構えると、難しいことのように思えるが、そんなことはない。職場の中で、仕事中だけ自分が求められる「ロール」でい続ければよいのである。

たとえば「今日の会議では穏やかに話すロールをやろう」と思えば、穏やかに話せるときだけ発言すればよい。どうしても会議で他人とぶつかってしまい、それがストレスになっている、という人は「あまりしゃべらないロールをやろう」と事前に心の中で決めて、会議の間演じることにしてみればよい。それだけでも、1日の精神衛生は相当よくなるものだ。

いつもはよく喋る人が、大人しくしているとかえって周りが「どうしたのだろう」「何か考えがあるのだろうか」と興味を持つこともある。それで聞かれたときに意見を言えばよい。そういうときの意見は、自分からペラペラしゃべるときよりも重く受け止められることもある。

こういう姿勢を取り続ければ、そのうち「彼の意見を最後に聞いてみよう」という雰囲気が生まれるかもしれない。そうなれば演出の勝利である。ロールをやろうと思うことが、結果的に「自分を演出すること」にもなる。

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