急展開、台湾新幹線「国際入札」打ち切りの裏側

日本の価格は高すぎて、欧州・中国製を導入?

「日本から購入した700Tはまだまだ使えるのにパーツは提供してもらえなくなった。新規車両購入に追い込まれたあげく、応札してきた価格は倍以上。日本の古き良き商道徳はどこへ行ったんだ。これではもはや話のしようもない!」(同)

日本企業連合はN700Sに若干の台湾仕様を施すものの、基本はフルスペックでの購入を譲らないという。日本では台湾高速鉄道を日華親善協力の象徴と受け止められているが、台湾の受け止め方は決して日本とは一致しない。特に高鉄の日本に対する不信感は開業のはるか前まで遡ることができる。

台湾が高速鉄道建設を決めたのは李登輝が初の民選総統となった翌年の1997年のことだった。BOT(一括事業請負後譲渡)方式で民間会社が建設、運営して投下資本回収のための一定期間の後、政府が高速鉄道そのものを回収するというプランである。

これに応じたのが李登輝の金庫番と言われた劉泰英率いる中華高速鉄道連盟と、台湾実業界立志伝中の人物であるエバーグリーングループの総帥、張栄発とゼネコン女性経営者、殷琪(伯父は日中戦争時、国民党から対日協力に走り、北京郊外に冀東防共自治政府を建てた殷汝耕。日本の敗戦後、漢奸として銃殺)ら台湾財界が結集した台湾高速鉄道連盟の2社で一騎打ちとなった。

鉄道車両と戦闘機がバーターに

台湾高鉄は独シーメンス、仏アルストムのヨーロッパ方式、中華高鉄は日本の新幹線方式導入を目指し、日欧の代理戦争となった。当初、日本語を流暢に操る李登輝の金庫番、劉泰英が率いる中華高鉄有利とみられていたが、ふたを開けてみれば台湾高鉄欧州方式が受注した。当時、日欧代理戦争を取材したベテラン記者は振り返る。

「最も力があった時の李登輝ですら、その決定には口をはさむことはできませんでした。まず劉泰英自身が政府の中で疎まれていたこと。金庫番というのは国民党の党有資産を投資、管理する中華開発の責任者だったということですが、黒い金を李登輝のために集めていた。それで行政院長(首相)、交通部長(国土交通相)が支持しなかった。価格面では台湾高鉄が中華高鉄よりも圧倒的に安価ではあったが、安全保障の要因がさらに大きかった」

アメリカはクリントン政権時代、対中関係を重視して台湾のF16売却を拒否。台湾は仏独に代替武器を求めるほかなかった。フランスはミラージュ200-5を60機台湾に売却した。それとバーターで高鉄が日欧代理戦争に勝利することとなったというのだ。

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