ヤフーを射止めた西武・赤プリ再開発の遠望 鉄道系ビルにIT企業の入居が相次ぐワケ

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一気に20フロア分のテナントを確保できた西武HDにとっても、今回のヤフー本社の入居決定は大きなプラスだ。「日本を代表するIT企業の本社の進出で、赤坂・紀尾井町の活性化とプロジェクト全体の価値向上に大きく寄与すると考えている」(広報)。

紀尾井町が「ヤフー村」に?

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「紀尾井町プロジェクト」のオフィス面積は約11万平方メートル(提供:西武ホールディングス)

実は昨今、鉄道会社が開発した新築ビルにIT企業が入居する事例が増えている。たとえば、2012年4月に東急電鉄が開業した渋谷ヒカリエには、LINEやDeNAといった企業が本社を構えている。2015年春には、同じく東急が建設中の二子玉川ライズ(2期)のオフィス棟に、楽天が移転する予定だ。

鉄道会社は駅周辺に広い面積の土地を有している。そのメリットを生かして開発した大規模オフィスビルは、業容の拡大が著しいIT企業の考える条件にマッチしているようだ。

IT業界は関連する企業の裾野が広く、周辺に立地するビルへの波及効果も大きい。ヒカリエが開業して以降、渋谷駅周辺のビルにはIT関連企業の入居が相次ぎ、東京都心でも有数のオフィス需給がタイトなエリアとなっている。今はまだ紀尾井町周辺にIT関連の企業は少ないが、今後は一帯が「ヤフー村」へと変貌する可能性も秘めている。

なお、現在ヤフーが入居している東京ミッドタウンを運営する三井不動産は「移転の時期はまだ先になるし、市況も上向いている状況なので、営業活動をしていけば問題ないと思っている」と、大きな空室が出ても影響は少ないとの見方だ。

これからおよそ5~15年先に、渋谷や池袋、品川―田町間の新駅など、東京都内の駅周辺の再開発が進み、大規模なオフィスビルが誕生していく見込み。有力企業を中心に、オフィスの流動性は今後ますます高まっていきそうだ。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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