では、宿泊業者は旅行会社から受け取る補償金をどのように使うことになるのだろうか。この点について、事務局は次のような「お願い文面」を対応マニュアルに掲載している。
つまり宿泊業者は、受け取った補償を仕入れ先の業者などに「適切」に配分することが求められる。現金を「お見舞い金」的な形で渡すか、それとも実費で商品を買い上げるといった方法を取ることになるだろう。
また、宿泊施設が直接販売した予約分のキャンセル料補償は、複雑な計算が必要になる。あるホテル運営者は、GoTo一時停止によるキャンセルで客が抜けた部屋を再販してなんとか埋めたものの、キャンセル料の補償について計算してみると「(再販した)収入の割合に応じて補償金が割り引かれる」結果になったという。
「補償金がたくさん欲しいとは言わない。でも、キャンセルで抜けた部屋を埋めるのに自助努力したのに、その分まで差し引くというのは異常な気がする」と、このホテル運営者は不満を漏らす。
年末年始の宿泊施設、2割は「休館」
ところで、この年末年始における宿泊施設の稼働率はどうだったのだろうか。日本旅館協会の永山久徳副会長が、SNSを使って国内旅館・ホテルに対し、部屋の稼働状況についてアンケートを取ったところ、大みそかから元日にかけての宿泊状況(回答:512施設)は、80%を超えた施設が18%、50〜80%未満が19%だった。一方、50%未満は43%で、そもそも休館したという施設も20%あったという。
年末年始は国内の広い地域で大雪となったことから「駆け込み需要が取れなかった」という声もあったが、いずれにしても本来なら書き入れ時である正月に、満室に近い宿が2割以下だったのは異常事態と言わざるをえない。
政府の支援がまったくない業種もある中、旅行業界はGoToトラベルという大型キャンペーンがあるだけに、「細かいことで文句を言うな」という声もある。しかし、昨年7月の開始以来、GoToキャンペーンは根本的なルールや運営方針が突然変わることが何度もあった。そのたびに業界関係者がずいぶんと振り回されてきたのも事実だ。
当初1月11日までの予定だったGoToトラベルの一時停止は、緊急事態宣言の発令を受けて2月7日までに停止期間が延長されている。コロナ感染者数が増え続ける状況の中、その後の展開は見通せないが、もし再開されることになるなら「後出しジャンケン」を繰り返すような対応ではなく、より確実なルール設計を今のうちに充分に練っておいてほしいものだ。
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