日本人が知らない中国「AI発展計画」驚きの実態 「コピー大国」から様変わりした中国の今の姿

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事例①:AI発展のリード役を目指す北京市

北京市は2017年12月に「科学技術のイノベーションの加速とAI産業の育成に関する指導意見」を公布。国内で最もAI関連企業が集積するアドバンテージを生かし、AI発展のリード役を目指している。

事例②:「世界AI大会」が開催される上海市

上海市も北京市と同時期に「次世代AI発展を促進する実施意見」を発表した。

上海市では2018年から毎夏に世界AI大会が開催されている。世界中からAIリーディングカンパニーや専門家が集まり、AIの発展や課題、世界にもたらす影響などを議論し、また世界に向けて発信しているのだ。

2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で初のオンライン大会となった。物理的な制限がないため、世界中から1億人超の参加者を集めたそうだ。上海市が「上海AIラボ」と「AI産業投資ファンド」の新設を公表したり、参加企業によりAIイノベーションセンターが設立されたりするなど、コロナ禍の中でも停滞することなく、例年どおり活発な展開がみられた。

事例③:EC最大手アリババ擁する杭州市

浙江省杭州市は、EC最大手アリババの本社を擁し、デジタルイノベーションの先進地域として知られている。2017年7月に「AIタウン(杭州人工知能小鎮)」の建設に着手した。AI関連企業や人材を誘致し、AI産業の集積地を作る計画だ。

また、産官学連携によるAI研究の推進のためアリババ、浙江省政府、浙江大学が共同出資し「之江実験室」を設立した。

中国を客観的に正しく理解することが必要不可欠

AIだけに限らず中国ではデジタル分野での躍進を続けており、どんどん進化している。しかも、中国国内にとどまらず、日本をはじめとする海外市場に積極的に進出を図っている。

「知彼知己、百戦不殆(彼を知り己を知れば百戦殆〈あや〉うからず)」

中国を客観的に見て正しく理解することが不可欠だ。

中国の変化とイノベーション能力の向上の波をチャンスとして捉え、チャイナテックをはじめとする中国の豊富なイノベーションリソースやアイデア、活力、人材、資金力などを十分に生かす戦略を日本は考えなければならない。

趙 瑋琳 伊藤忠総研 産業調査センター 主任研究員

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チョウ イーリン / Weilin Zhao

中国遼寧省出身。2002年に来日。2008年東京工業大学大学院社会理工学研究科修了、イノベーションの制度論、技術経済学にて博士号取得。早稲田大学商学学術院総合研究所、富士通総研を経て2019年9月より現職。情報通信、デジタルイノベーションと社会・経済への影響、プラットフォーマーとテックベンチャー企業などに関する研究を行っている。論文・執筆・講演多数。著書に『BATHの企業戦略分析―バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイの全容』(日経BP社)。

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