病床の多い日本でなぜ「医療崩壊」が起きるのか 医療法が専門、東京大・米村滋人教授に聞く

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――感染した患者を受け入れる病院は満床状態になり、「医療崩壊」が起こっていると報道されています。

いわゆる医療崩壊は、一部の医療機関で(すでに)起こっている。(感染患者を)受け入れている病院は、これ以上(患者を)受け入れれば感染対策が不十分になり、他の疾患の患者を受け入れられないなどの問題が出てくる。

感染者を受け入れる病床は少しずつ増えている。だが行政は、(すでに患者を)受け入れている病院にさらに病床を増やすよう依頼している状況だ。病床をやむをえず増やしても、そこで働く医療従事者が増えるわけではない。そのため、現実に患者が発生しても、やっぱり受け入れることができないという状況がたびたび起こっている。

一部の医療機関のみが感染患者を引き受けることにより、医療機関の間に負担の大きな偏りが生じている。

医療従事者の負担はすでに限界

――医療従事者への過重な負担も問題になっています。

感染患者を受け入れる医療機関に、医療従事者を公的に派遣する措置はない。感染者を受け入れる病院では、内部で人員をやりくりせざるをえない。こうした病院のスタッフは長期間にわたって感染患者に対応し続けなければならず、すでに限界に達している。

よねむら・しげと/東京大学大学院法学政治研究科教授・内科医。2000年、東京大学医学部医学科卒業。2004年、東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。東京大学病院などを経て2017年から現職。東京都健康長寿医療センター循環器内科の勤務医も兼務。専門は民法、医事法(記者撮影)

一方で、感染患者を受け入れない医療機関の中には、患者数が減少し、医療従事者の人員が過剰になっているところもある。医療従事者間でも負担の偏りが生じている。

――感染患者を受け入れたことで、他の病気にかかった患者が受け入れられなくなるなど、通常診療への影響が懸念されています。感染患者を受け入れる医療機関を増やせば、他の病気の治療に影響が出ないのでしょうか。

たしかに、ある程度規模が大きい病院でなければ、感染患者と他の救急患者を分けて対応するのは難しい。感染患者を診ることのできない病院にまで、無理に感染患者の受け入れを強制する必要はない。

感染患者を受け入れていない病院が他の救急患者を積極的に受け入れるなど、病院間で役割分担をすればよい。要は、日本全体として医療資源をうまく活用する必要がある。

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