日本のコロナ重症者対応が抱える決定的な弱点 医療崩壊の責任は民間病院でなく厚労省にある

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厚労省が「特定感染症指定医療機関」に認定している国立国際医療研究センター病院や、「第一種感染症指定医療機関」に認定している都立駒込病院、都立墨東病院、東京都保健医療公社荏原病院、自衛隊中央病院は受けているだろうが、残りはわからない。大学病院で積極的に受け入れている病院は、東京医科歯科大学などごくわずかだ。

知人の都立病院勤務医に聞くと、「1つの病院で受け入れる重症患者は5人程度」という。多くの病院が少数の重症患者を受け入れていることになる。

中国やアメリカは専門病院で集中的に治療

実は、このような対応をしている国は少ない。中国の武漢を第1波が襲ったとき、中国政府はコロナ専門病院を建設し、全土から専門家を招聘したことは有名だ。コロナ感染者を専門病院で集中的に治療した。

実は、このような戦略を採ったのは、中国だけではない。下表は、第1波のある時点でのアメリカのマサチューセッツ州における主要病院のコロナ感染者の受け入れ数を示している。トップのマサチューセッツ総合病院は278人で、このうち121人は集中治療室での治療が必要な重症患者だった。

実はマサチューセッツ総合病院は、ハーバード大学の関連施設で、世界でもっとも有名な病院の1つだ。ハーバード大学には付属病院がないため、マサチューセッツ総合病院が実質的にその役割を担っている。

平素は先進医療に力を注ぎ、世界最高峰の医学誌である『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』には、「マサチューセッツ総合病院の症例記録」という定期連載のコーナーがあるくらいだ。

病床数は約1000床で、日本の大病院と同規模だが、コロナの流行において、重症患者を一手に引き受けたことになる。受け入れた患者数は、現在の都内の重症患者数の総数よりも多い。

これは東京大学医学部付属病院がコロナ重症者を一手に引き受けたのと同じだ。多くの専門医や看護師を抱えるため、多数の施設に分散して受け入れるより効率的だ。

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