兄が性犯罪を繰り返した女子高生の激しい苦悩 なぜ彼女はこれほどまでに引きずったのか

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結局、半年ほど仕事を休みましたが、その後はすっかり落ち着いているということです。

「いま振り返ると、(初めて兄が捕まってから)一人で我慢していた十数年は、本当に無駄だったなと思います。仕事だけはちゃんとやって充実していたけれど、それ以外は全然楽しくなかったし、(兄のしたことを考えると)私は一生幸せになれないんだろうと思って生きていたので。今はだから、ちゃんと生きるようになって、2年目です」

それまでの15年とは全然違うか、と尋ねると、「全然違う」とのこと。「すごく楽しい、みたいな感じではないけれど、何をしても晴れない、というふうではもうない」といいます。また、以前は結婚もしないし家族も要らないと思っていたのですが、最近は「自分がしてほしかったことを、子どもにしてあげたい」という思いも出てきたそう。

彼女が苦い表情をした理由

取材を終える頃、由芽さんが店に入ってきたとき「あの元気そうな人が?」と思ったことを正直に伝えたところ、彼女はちょっと苦い表情を浮かべました。

「私はずっと、病んでいるときもこういう感じだから周りに全然気付かれなくて。むしろ『悩みがなくていいね』と言われてしまう。そのたびに『この人、人を見る目ないな』って思います。へらへらしてる人だって、実はつらいことあるんだぞって。

その分、私は周りの人を見るようになりました。だから、気付かれないように振舞っている人がつらい思いをしているときに声をかけてくれるよね、って言われます」

周囲が「元気そう」と思ってしまうのは、やむをえないのかもしれません。本人も周囲に心配されたくなくて、元気に振舞っているのです。ただ、「元気そうに見えることと、本当に元気であるかどうかは別だ」ということを周囲がわかっていないと、由芽さんのように、SOSをスルーされ、追い詰められてしまう人もいるわけです。

気を付けないといけないな。「元気そうに見えた」と伝えてしまったことを、内心ちょっと申し訳なく思いながら、由芽さんとともに店を後にしたのでした。

大塚 玲子 ノンフィクションライター

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おおつか れいこ / Reiko Otsuka

主なテーマは「いろんな形の家族」と「PTA(学校と保護者)」。著書は当連載「おとなたちには、わからない。」を元にまとめた『ルポ 定形外家族』(SB新書)のほか、『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』(教育開発研究所)『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(同)など。テレビ、ラジオ出演、講演多数。HP

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