「ある日、先輩とご飯食べていたときに『本当はどう思ってるの?』って聞かれたんです。全然私の家のこととか何も知らない先輩だったんですけれど、『何をしたいの? 本当はあなたはどうしたいの? ずっと前から思っていたけれど、何をしていても楽しそうに見えないし、何かモヤモヤしているように見える』って。そのときはお茶を濁したんですけれど、家に帰って一人で考えて、その言葉がすごく刺さって。
『私、何もしたくない』と思ったんです。仕事もしたくないし、本当に何もしたくない、と思ったら、本当に仕事に行くのがつらくなっちゃって。それで休みをもらおうと思って、上司に家のことを全部話したんだけれど、『頑張ろうよ、仕事に救われるときもあるよ』みたいな感じで全然ダメで。
それでも仕事に行き続けていたら…
もうそういう段階じゃないんだけどって思いながら、それから半年仕事に行っていたら、もう本当に無理になりました。ある日仕事中に『もうこれは絶対無理だ、できない』と思って。引き継ぎ中に泣いてしまい、そうしたら同じ部署の子が上司に話してくれて、それでお休みをもらいました」
あとから聞いたところ、上司は由芽さんが最初に相談してきてからもミスなく働いていたため、大丈夫だと思っていたようでした。この気丈そうな由芽さんが最初に話をしてきた半年前の時点で、これはただならないことだと、気付けたらよかったのですが。
「上司には恵まれなかったですけれど、友達や同僚とかには、本当にすごく恵まれました。(きっかけをつくった)先輩からは、あとですごく謝られました。『そんな決定的なことを言ったつもりはなかったけれど、それは本当に申し訳ないことをした』って。でも、言ってくれてよかったと思っています」
その後、医者ともいい出会いがありました。今度はちゃんと話をできる先生を選ぼうと調べ尽くし、近所で口コミ評価が高いクリニックを見つけて訪れたところ、その医者の対応は非常に信頼できるものだったため、以来ずっと頼りにしてきたそう。
仕事に行けなくなったこと、鬱病になったこと、兄が捕まってから抱えてきた思い――両親にすべてをぶつけたのは、休職から一カ月ほど経った頃でした。両親から由芽さんに対し納得できるような言葉はまったく出てこなかったものの、母親はそれから由芽さんの症状が良くなるまで毎週家にきてくれたそう。当時「一人でいると死ぬことしか考えられなかった」彼女にとって、それはとても必要なことだったようです。
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