ロイヤルホストが「冷凍食品」に力を入れる事情 コロナ禍での「食の変化」にうまくマッチした

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ロイヤルホールディングスでは、グループが抱えるほかの飲食チェーンにおいても、例えば、てんやのテイクアウト専門メニューといったさまざまな方法でニーズを探っているところだが、ロイヤルホスト店舗におけるフローズンミール販売との抱き合わせは、コロナによる外食控えへの対応策にもなっているようだ。

なお、12月14日に発表された月次売り上げを見ると、ロイヤルホストの11月売り上げは売上高が前年比90.8%、来客数84.0%、客単価108.2%、てんやは売上高88.6%、来客数89.3%、客単価99.2%と、コロナの痛手からほぼ回復しているようだ。

それにしても、もとは飲食店チェーンのロイヤルホストが2019年に冷凍市場に参入。これだけでも大きな挑戦だと思えるが、さらに1年で方向転換とメニュー拡大というスピーディーな展開を遂げられたのはなぜなのだろうか。

国内線の「機内食」から始まった

これはロイヤルホストの歴史と関係があるようだ。

ロイヤルホールディングスは1951年、国内線における機内食の提供からスタート。1953年にフランス料理店「ロイヤル中洲本店」を出店している。グループの展開する「外食事業」「コントラクト事業」「機内食事業」「ホテル事業」「食品事業」といった5つの事業の中でも、機内食や空港売店などの事業が、レストランよりも前に始まっていたのだ。

そして1962年にはすでに、レストランのシェフの味を保存するための冷凍技術の開発に着手したという。

「アムンゼンの極地探検が直接のヒントとなったようです。1950年代、温めれば食べられるTVディナーがアメリカで一般的になっていましたので、創業者の江頭(故・江頭匡一氏)が『日本もやがてそうなる』と考えていたことも、冷凍技術に早くから取り組んだ理由です」(庵原氏)

1969年にはセントラルキッチン方式の拠点となる工場を設立。ソースなどを工場で仕込み、店舗で一手間加えて調理することで多彩な味を提供できるセントラルキッチン方式には、シェフが手がけた料理の味をそのままに保存できる冷凍技術は欠かせないポイントだったわけだ。

そのセントラルキッチンは現在、福岡、東京の2カ所でグループの外食事業を支えているが、こうしたインフラがすでにあったからこそ、新たな事業であるフローズンミールもスムーズにスタートできたのだ。

また、ロイヤルデリの多様なメニューの実現には、各国フェアの積極展開により、レシピを蓄積してきたことが役立った。

ロイヤルホストでは1974年のハワイフェアに始まり、イタリア、ロシア、アメリカ、スペイン・バスク地方と、世界各国の味をメニューに取り入れてきた。こうしたフェアではシェフが実際に現地に視察に赴き、食材も本場のものを輸入。また、1983年から開催している夏のカレーフェアではさまざまなカレーを提供してきた。「カレーだけでも100種類のレシピが蓄積されている」(庵原氏)という。

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