リニアの裏で静岡県、「東電ダム」から巨額収入 川勝知事“命の水"は欺瞞に満ちた言動だ

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JR東海の回答に対して、同年8月に開かれた大井川利水関係協議会意見交換会で染谷絹代島田市長は「場合によっては、(JR東海が)東電から水利権を買い取るという方法もある。取水の制限を要請するのは難しいが、水利権を買うという方法も考えられる」などと述べ、流域の首長はリニア問題解決に当たって、JR東海が田代ダムから流出する水で代償させる方策を述べた。

これまでの県専門部会の議論で、JR東海は先進坑が開通するまで、工事中の作業員の安全上、山梨県側に10カ月間毎秒0・08㎥(平均)、長野県側に7カ月間毎秒0・004㎥(同)の流出はやむをえないとしている。染谷市長の現実的な解決策を求める発言にもかかわらず、川勝知事はJR東海とのリニア議論になると、“命の水”を持ち出して「水1滴たりとも県外流出は許可できない」とはねつけ続けている。

水利権の許可権限を持つ国交省静岡河川事務所は「リニア問題については、こちらの担当ではない。水利権を民間同士で売買するという議論をしたことはない」などと回答した。

東電から得た金は一般財源に

染谷発言を受けた昨年9月の知事会見で、石川嘉延前知事が東電に水利権の交渉をしたことにも触れた記者の質問に、川勝知事は「水が取り戻せるかどうか現地(早川町)に入った。早川町にとっては電源立地交付金の入る不可欠な施設(東電の田代川第一発電所、第二発電所)。JR東海がやることは湧水を戻すことで(水利権の買い取りは)筋違い」などと述べ、染谷発言を否定するとともに、知事本人が田代ダムの「水返せ」運動の先頭に立つことへの言及を避けた。

2017年度から2019年度まで3年間の田代ダムの流水占用料について静岡県への情報公開請求で、2017、2018年度に年額3097万円、2019年度に同3125万円を東電が県に支払っていることがわかった。1980年以降の40年間だけでも優に10億円を超える。

県議会12月定例会で田代ダム問題を質問する元島田市長の桜井勝郎県議(前列右)、すぐ隣に川勝知事(前列左、筆者撮影)

流水占用料は一般財源であり、使途は県の判断に委ねられる。田代ダムから得られた多額の費用は水源涵養などの事業には使われていない。上流部では水源を守る森林荒廃が顕著だが、県の対策事業にはなく、護岸整備などの河川管理にも充当されていない。

桜井県議は「田代ダムでそんな多額の流水占用料が支払われていることを初めて知った。川勝知事が“命の水”を守ると言うならば、そのお金を使って、県のやるべき事業をちゃんとすべきだ」などと話した。

「“命の水”を守る」という川勝知事の発言は、内容の伴わない欺瞞に満ちた言動にしか聞こえない。

小林 一哉 ジャーナリスト

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こばやし・かずや / Kazuya Kobayashi

1954年静岡県生まれ。78年早稲田大学政治経済学部卒業後、静岡新聞社入社。2008年退社し独立。著書に『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太「命の水」の嘘』(飛鳥新社)等。

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