リニアの裏で静岡県、「東電ダム」から巨額収入 川勝知事“命の水"は欺瞞に満ちた言動だ

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しかし、実際には、水利権更新前の2015年9月に開かれた同協議会で、大井川流域8市2町の首長、議会議長で構成する大井川の清流を守る研究協議会が「今以上の水量増加」「リニアによる流量減少の懸念を踏まえ、慎重な対応を求める」などの要望を提出している。決して、副知事が答弁したような無条件などではない。

同協議会に出席した島田市、川根本町の首長が、「大井川は豊かな水の流れになっていない。1滴でも多くの水を流したい」などと要望した。田代ダムの水利権では、冬場に毎秒0.43㎥を大井川に戻す維持流量で合意したが、実際は、凍結などで発電施設に支障が出るとして、約束した毎秒0.43㎥を下回る水量しか大井川に返さない“特例”が認められている。この問題に、首長らから異論、反論が出て、東電に対応を求めたのだ。

県は田代ダム問題を避けている

同協議会では「東電だけの検証で第三者の検証を行ったのか」「冬場に凍結させない技術があるのではないか」などの意見も出たが、結局、今後10年間で東電が検証していくという結論で議論を終えてしまった。東電の既得権を何とかするためには、県のトップ、知事が先頭に立つことが不可欠だが、同協議会の会長職は県河川局長に任されている。リニア問題を話し合う県リニア環境保全連絡会議などに比べて、県が田代ダム問題に力を入れていないのは明らかだ。

10月の県議会リニア集中審議の委員会で田代ダム問題について議論したことはないと答える難波喬司副知事(右端、筆者撮影)

それどころか、知事は田代ダム問題を避けている。今年10月5日、県議会委員会リニア問題集中審議で、「田代ダムについての審議はこれまでなかったのか」という質問に対して、難波副知事が「一切ない」と回答した。県議は再度、確認したが、副知事は強く否定した。

県リニア担当理事によれば、2014年春から2018年夏までの4年間に限定した時期に「田代ダムの審議は一切ない」という都合のいい答弁だったらしい。ただ、これで、2015年田代ダムの水利権更新に当たっての大井川水利流量調整協議会の審議は知事、副知事には一切、無関係であると断言したことになる。つまり、田代ダムから流出する水は、知事には“命の水”には当たらないと公言したに等しい。

ところが、2019年6月、難波副知事名でJR東海に送った「中間意見書」に「田代ダム」が登場している。「上流部の河川水は、その一部が東電管理の田代ダムから早川へ分岐し、山梨県側へ流れている。このことを踏まえた上で、静岡県の水は静岡県に戻す具体的な対策を示す必要がある」などとJR東海に求めている。非常にわかりにくい文章であるが、ふつうに読めば、田代ダムから流出される水を大井川に放流するようにも取れる。JR東海は「当社から東電に取水の制限をするのは難しい」と回答している。

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