リニアの裏で静岡県、「東電ダム」から巨額収入 川勝知事“命の水"は欺瞞に満ちた言動だ
筆者による静岡県への情報開示請求で、東京電力が田代ダムの流水占用料として年額3000万円超を県に支払っていることがわかった。1980年以降の40年間だけでも優に10億円を超える。このお金をもらうことで、大井川から最大毎秒4.99㎥の水が山梨県側へ流出している。
川勝平太静岡県知事は、「JR東海の南アルプストンネル建設でトンネル湧水を山梨県側へ1滴も流出させない」として、2014年に“命の水”を守るために立ち上がったと主張するが、翌2015年、田代ダムの水利権更新の際、東電には“命の水”を取り戻す働き掛けをまったくしなかった。結果的に、川勝知事にとっては東電からの多額の現金収入は“命の水”よりも優先されるべきもののようだ。
田代ダムから県外に流れる水は”命の水”ではない
田代ダムは1928年建設された大井川で最も古い発電所用のダム。1955年、従来の毎秒2.92㎥から毎秒4.99㎥に取水が増量されると、大井川の水枯れ問題の象徴となり、流域住民の「水返せ」運動が始まった。
1975年12月の水利権更新で、静岡県は毎秒4.99㎥のうち、毎秒2㎥を大井川に返してほしいと要望したが、東電は「水利権は半永久的な既得権」と退けた。それから、30年間、「水返せ」運動は県知事、流域市町の住民らによって地道に続き、2005年12月の水利権更新でようやく毎秒0.43〜1.49㎥(季節変動)の河川維持流量(渇水時等に維持すべきと決められた流量)を勝ち取った。
12月7日の静岡県議会一般質問で、2005年の水利権更新当時、島田市長で「水返せ」運動の中心にいた桜井勝郎県議が、田代ダム問題を取り上げ、「知事はJR東海を悪者に県民の不安を増幅させる印象操作をしている。大井川の同じ水でありながら、田代ダムから山梨県に放流される水は“命の水”ではないのか。2015年の水利権更新で県は東電に対して、“命の水”は譲れないと主張したのか」などと知事を追及した。
この答弁から知事は逃げた。代わりに難波喬司副知事が、県、流域市町を中心とした大井川水利流量調整協議会の議論で河川維持流量の合意形成をしてきた経緯を説明、「2015年度の更新の際には無条件で水利権が更新された」などと答え、実情を明かさなかった。
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