誰もが驚愕する医学史上の「とてつもない失敗」 「手を洗おう」と呼びかけた医師の哀れな最期

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手洗いの知識は、19世紀になって登場する。ハンガリーの産科医イグナーツ・ゼメルヴァイスが、死体の解剖を行った産科医は、女性の出産に立ち会う前にせっけんと塩素で手を消毒するべきだと主張。ところが、その業績はほぼ無視されてしまい、ゼメルヴァイスは精神科病院に収容されて敗血症で世を去っている。なんとも痛ましい。

だが、バトンは渡されていた。やがて、同年代のフランス人医師ルイ・パスツールが低温殺菌法を確立。1870年代には、スコットランド人医師ジョセフ・リスターが手術室の無菌状態を強く主張し、のちに「近代的な外科手術の父」と呼ばれるのだ。

ゼメルヴァイスは正しかった! だが、周囲がその先見性を認めようとしないことは今でも往々にして起きる。手を洗いながら、哀しき先人を思いたい。

病原体との戦いと予防接種のはじまり

紆余曲折しながら発展してきた感染症の研究だが、人類は古代から一貫して病原体と戦い続けている。1980年に世界根絶宣言が出された天然痘ウイルスは、その最初の強敵だ。なんの科学的知見もない時代から、疫病を冷静に観察していた人物はいる。

天然痘に一度かかると、二度とかかる者はいないことをはじめて報告したのは、古代ギリシャの歴史家トゥキディデス(紀元前460〜400年頃)だ。感染症によって免疫系が刺激され、体内に抵抗力が生まれるというのは現代の予防接種の基本概念だが、それをはじめて示唆したと言える。

中国では、1549年(10世紀との情報もあり)から、故意に天然痘に感染させる人痘摂取が実施されており、その慣行はインド、トルコへと伝わって、ヨーロッパを経て、18世紀末には南北アメリカにまで伝わったようだ。

科学的な意味でのはじめての予防接種が行われたのは1797年。イギリスの医学者エドワード・ジェンナーが、症状が軽くてすむ牛痘に故意に感染することによって、死に至る危険をもつ天然痘にかからなくなることを発表し、これが予防接種の礎となった。

19世紀には、微生物学者で化学者のルイ・パスツールが、炭疽病(1881年)と狂犬病(1885年)のワクチンを開発。「予防接種(vaccination)」という単語を生み出したのもパスツールだ。

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